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第13話
「無駄な毛もない綺麗な紅い穴から男に抱かれた白いエキスが零れている様子は絶品だな……」
先程の「紳士」がその横のボックス席にヘビを思わせる指を伸ばした。そちらでは、臀部が最も高くなる営みの形で「奉仕」している全裸の青年が男性のモノを挿れて上下に動いている。
その男性の高価そうなスーツが動く度に、白い脚が宙に弧を描いている、淫らな。
「ここまで使い込んでないのは確かなようだ……」
蛇のような指が男性器と共にぽっかり開いた穴に挿っていったような感じだった。
「ああっ……。貴方も、オレの肛門に入って来ても……イイよぉっ。
二本挿しまでなら大丈夫……ああっ……ンっ……イイからっ」
甘く爛れた声が会場に切れ切れに流れている。その淫らな言葉に触発されたのか、彼に挑んでいる男性の腰の動きがさらに激しくなった。
ローションで濡らされた場所が湿った擦過音を淫らに響かせている。
その会場の雰囲気が熱病のように広がって、床に膝と手を付いて足を大きく広げて「紳士」を迎え入れながら、二本の男性の象徴を手で巧みに昂ぶらせている全裸に近い青年の唇に違う男性の逸物がピタピタと押し当てられていた。その他にも、絶頂を極めた男性が穴から出した後に、ポッカリと開いたくすんだ紅色の穴から垂れている白い液体もそのままに、次の「紳士」の欲望の象徴を嬉しそうに飲み込んでいる。
「ここのスタッフは皆こんなだ。しかし、ここまで開発されたのは好みではないのでね」
ユキは――ショーとか行為そのものが初めてなのは分かっていたが、サドっ気の有る「紳士」の口ぶりからすると――ゲイバーで働いているわけでもないらしい。
「左様でございますか……。熟した肢体を好まれる方も多数いらっしゃるようですが、まだまだ硬い蕾を自分好みに丹精するというのも、また格別で御座います。
しかし、主役の二人のショーがあまりにも秀逸過ぎたので、二次会が雪崩のように始まってしまったことはお詫び致します」
「二次会」という名の「相手構わず、人数も構わない」というプレイのことだろう。
「リョウさん……」
恥ずかしげに足を閉じたユキが客席に届かないような小さな声で呼んでくれた。
ただ、ほぼ半数の客はまだ舞台に注目している。その他の「紳士」達は「ハッテン場」さながらの痴態を――いや、それ以上かも知れなかったが――繰り広げているので舞台の上を見るよりも己の肉欲の発露に必死の様子だった。
ただ、こちらを注視している複数のぎらついた眼差しが有ることも事実だったので、ユキの呼びかけに「聞いている」という意味を含んだ眼差しで答えた。
「お客さんの個人情報を入力させていたでしょ?
そしてこの店のスタッフ達はコトを始める時にタブレットをタップして、どの人としたのかを絶対に入力するんだ……。その人数が多いほど、請求されるお金が増えるっていう仕組み……」
話しをしていることが――しかも、内容が店のコトなので尚更だった――漏れないように、ユキの細い腰を片手で抱いて、もう片方ではすっかり「感じる場所」に変わった乳首を弱く転がしながらキスの合間に聞いていた。
「二次会は始まった……という認識は当然持ち合わせている。
そしてその功労者が舞台の上の二人だということも。
ユキ君、もう一度入札して、お相手をチェンジするというのはどうだろうか?」
どう見てもサドっ気のある反社会的勢力の人間だと思っていたが、言葉遣いとかを聞いていると一昔だか二昔前だかの893というよりも、一応はカタギの会社の経営者で資金源はそっち方面に頼っている経済893なのかも知れないなと思った。
ユキの顔を間近で見ると、長い睫毛が震えていた。しかもほっそりとした肢体も先程の紅色から青薔薇に似た恐怖を感じさせる色だった。
「チェンジは許しません。現在の最高入札者はまだ私です。
ただし、お客様の要望にもお応えするのも重要です。ユキ、もう少し手荒に扱われても構わないかしら?」
詩織莉さんが女王様のような凛とした口調が会場を圧倒している。
流石は主演映画にも出ているだけあって、その厳然な冷たさを含んだ声に会場の淫靡さを薔薇園の趣きに変えていた。
「シオリ様がそこまで仰るとは正直仰天しました。
それならば、私が参加するのは――大変遺憾ですが――遠慮するとして」
ユキが安心した感じのため息を零している。
「シオリお姉さま、有難う……。リョウさんとなら、少しくらい乱暴でも構わないです。もちろん、リョウさんが良いと言ってくれたらという前提ですけれど……」
ユキの手が縋るように繋がれた。
しかし、先程も思ったのだが、何故詩織莉さんの名前を知っている――まあ、彼女は女優なので一方的に知られている場合も有るが――「お姉さま」と呼ぶのは不審だった。
ただ、何となく似ている――女王様と王女様の違いこそあるが――のも、不可解だった。
そしてサドっ気のありそうな経済893までもが、詩織莉さんの言葉に反論したり凄んだりしないのも。
それよりもむしろ敬っている感じだったが、それは女優としてでは――ちなみに本当に儲かっている893は人気女優も「ペット扱い」するとか聞いていた――なさそうだった。
先程のユキの潜めた声で告げられた内部事情を証明するかのように、乳首や前、そしてお尻だけを露出した黒いレースの服を纏ったスタッフと思しき青年が、詩織莉さんの隣の席のジャニー○系青年に手首を掴まれて席に呼ばれた瞬間に、タブレットを巧みにタップしていた。
その後バックリと開いたお尻をさらに広げられてジャニー○系の青年の昂ぶった物を挿れらえていたが。
「ああっ……ああっ……」
ジャニー○系の青年が深く挿っていくと淫らな喘ぎ声をいささか不自然に上げていた。
そのジャニー○系青年の穴には例の院長先生の物が挿っていて、彼の望みは叶ったようだったが。
「ユキが望むのなら、もう一度でも構わないが」
大きな声できっぱりと言った。
「商談成立ね。最高のイケメンと咲き初めた花のような青年との本番は『二次会』の良い余興になると思います。
最低入札額は、そうね……1千万からにしましょうか?」
見るだけで1千万円という強気な値段設定に内心驚いたが、ユキも同じだったようだ。
「お姉さま、その金額は……」
遠慮がちな声で詩織莉さんに告げている。
「良いのよ。貴方にはお金が必要でしょ?このチャンスを逃してはいけないもの」
詩織莉さんの言葉に色々分からないことは有ったが、ユキに対する気遣いとか労わりの念だけははっきり分かった。
「では、素晴らしい愛の行為の最中では御座いますが、舞台の上で繰り広げられる乱暴さを増した行為を鑑賞しながら行為に耽るというのも一興です。
最低金額は1千万円から。皆様、タブレットに入力頂けると幸いです」
司会者の声も――多分、予想収益よりもかなり上回っていたからに違いないが――上擦っていた。
「本当に大丈夫なのか?乱暴にしても」
ユキは初心者とは思えないほどの順応力を見せて可憐な肢体に淫らな花を咲かせたのは事実だったが、それでもやはり身体のことは気になってしまう。
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