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第29話

 実際のところ、男遊びはそこいらのゲイの人には負けないくらいの――ユリのような一度に何人もということはなかったが――経験が有ってもユキの今の状態にさせたことはない。  ただ、それを言うと余計にユキを混乱させてしまいそうなのも確かだった。 「大丈夫だ。ちゃんとイけば鎮まる」――「多分」という単語は省略することにした。  ユキの凛とした感じの瞳や引き締まった唇からも透明な雫が流れ落ちて薄紅色の素肌から赤紫の蘭の花の上に落ちていくのもとても綺麗だった。 「ああっ……んっ……。じゃあ、リョウので衝いて……深くまでっ……。  このままだと……頭が桃色に爆発……しそう……でっ」  ユキの甘くて溶けそうな嬌声を漏らす唇を重ねて、唇全体を強く吸った。  チュっという音が舞台を固唾を呑んで見詰めている観客たちにも響くほど静まり返っていた。 「ユキ……手を床に付いて、腰を出来るだけ高く掲げて欲しい。出来るか?」  しばらく返答を待ったものの、ユキは嬌声しか出ない感じだった。それだけ深く感じているのかと思うと男冥利に尽きる気がした。  ユキの華奢な腰を優しく掴んで誘導すると、我に返った感じで涙の膜を張った瞳に理知の光りが宿った。それでも壮絶に色っぽかったが。 「床に手と膝をついて、腰を高く掲げて欲しい。出来るか?」  ユキの震える紅色の指が、そしてもっと無垢な感じのする膝裏の紅色が震えているのも絶品だった。胡蝶蘭よりも瑞々しくて、生気に溢れているのも。 「これで……イイの?」  ユキは未知の快楽の戸惑いを忘れた感じで、腰を限界まで上げている。そして、いったん繋がりを解いた桃よりも綺麗なお尻を割り開いて今から挿れる場所を目の前に晒してくれる。  ショーの最中だということに気が付いて、観客を意識したのは流石だった。  ショーに出たことはなかったものの、詩織莉さんと観客側で見ることは多々有った。強引なプレイが多かったが、それでも最後の方は目の前の悦楽のみを追ってしまって観客席のことを忘れているのでは?と内心思うことの方が多かった。あるいは、エスエム紛いの行為で、Mの気はなかったのだろう、痛みだけを訴えるような感じで自分の息子は委縮したままとか。  そういう点でも、ユキは悦楽を追いながらも観客のことも考えているし、オレがどういう形でフィニッシュまで持って行こうとしているのか察したらしい。 「綺麗なお口をぱっくり開けて……。唇と同じ色に染まってとても綺麗だ。  しかも、白いエキスを花の蜜のように滴らせて期待に震えているのも、胡蝶蘭に真珠を飾ったようだな……。ああ……」  ユキの下の唇から零れている白い液体を指で掬って背後に飾られている胡蝶蘭の赤紫色の花弁へと移した。 「素敵……。胡蝶蘭に真珠が宿ったようでとても綺麗だわ。それにヒ……ユキの可愛いモノも大きくなって弾けそうに震えているわね……。早く何とかしてあげて頂戴、リョウ」  ヘンリーⅣのボトルを紅い爪で傾けながら詩織莉さんが感嘆の声を上げている。先ほどは、何だか彼女らしくない振る舞いと表情だったが。「ヒ」とオレが覚えている限り二回言っていた。その音が何の意味を持つかは後で聞いてみようと心にメモした。 「ユキ……愛している。挿れる、ぞ?」  先端部分を当てて丸く腰を動かした。すると、ユキの腰が更に上へと掲げられるのが健気でそして淫らな眺めだった。 「うん……。早く……欲しいっ……。奥までっ……。ああっ!!イいっ。凄くっ感じるっ!!リョウの大きくてっ……硬いのっ……がっ」  奥まで一衝きすると、即座に腰を引いた。 「やだっ……んっ……抜かないでっ……」  結合部分から、オレの息子と共に白や透明の雫が宙に舞っては煌めいている。  ショーを盛り上げるための趣向なのは、聡明なユキには分かっているハズだった。 「これは、最前列に居るよりも後ろの方がより楽しめますな……。さ、行くぞ。お前もあのユキという子みたいに新鮮な艶っぽさとか、ナカ行きのコツを掴め」  詩織莉さんの隣に居た美容整形医院の院長先生は不満顔のジャニー○系青年の腕を掴んで席を立った。何だか物凄く急いでいる感じが妙に可笑しい。 「もっと欲しかったら……、ユキが自分で腰を上げたら良い……。  逝っている最中のせいか、ユキの中、物凄くうねっている。オレだって……ユキの中に挿りたい……」  先端部分だけを挿れた中途半端な――ただ、客席からの嘆声とか反応は物凄く良かったものの――営みの形は正直オレだって物足りない。 「ああっ……んっ……」  ユキの腰が限界まで掲げられた。当然、オレの息子もグネグネとうねっているユキの中に迎え入れられる。 「これでっ……限界っ……。ああっ、イイ、イイよぉ……。んんっ……ダメっ……出ちゃうっ……」  ユキの身体が強張って震えている。放出は近い感じだったので、奥の奥まで力強く貫いた。  S字結腸の辺りを衝くと、ユキの華奢な身体が胡蝶蘭の艶めかしさで揺らいだ。 「ユキ、一緒に……。愛している……」  胡蝶蘭の床に頽れそうな腰を固定してそう告げると、ユキも紅い唇が物言いたげに動いた。 「リョウ……僕も、愛しているっ……ああっ……んん……もうっ……」  汗の雫を纏ったユキの身体を支えて起こした。  客席の方へとユキが白いエキスを放つのと、オレの爆発はほぼ一緒だった。

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