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第40話

「ああ。要留守に……洋幸をベッドの上に押し倒すなってことだ。  ほら、初めてだし色々疲れているだろうから」  ユキは顔から火が出ているのではないかと思うくらい真っ赤になった。その様子もとても可愛い。詩織莉さんの遠回しな制止が効かなくなりそうなほど・ 「リョウがしたいなら、良いよ。  さっきも物凄く広い湯船に浸かりながら、フカフカのベッドでされるのってどんな気分かな……とか思ったら。乳首がこんなになっちゃったし。  ココも、むずむずしていて……そして熱いんだ」  ユキはハラリとバスローブを華奢な身体から滑り落とした。  薄紅色の乳首も可憐に尖っていて、思わず視線がそこに集中してしまう。  オレが見ているのが分かったのか、紅色が濃くなって薔薇の蕾のように綺麗だった。  そして半ば立ち上がっている下半身も華の茎のような瑞々しさに溢れている。  クルリと後ろを向くと、ユキは両手でお尻を開いて見せてくれた。  ショーの余熱が残っているのか紅色に染まった門がヒクヒクと動いているのもとても初々しくて、そして清楚な蠱惑に満ちている。 「どこがムズムズするんだ?」  そのシミ一つない綺麗な身体を――しかも色々な所に情事の痕跡が色濃く残っている――見ていると、自然に咽喉が乾いて声が低くなってしまう。 「乳首と、お尻の中……。ユリさんから『慣れれば物凄く気持ち良い場所になれる』と聞いていたけど、一晩で慣れちゃたみたい……・リョウが上手いからなのかな?  それとも舞台の上でお客さんに言われたでしょ、インランって。実は僕、そうだったのかも……」  確かにそんなヤジは飛んできたような気がする。 「その言葉は……そうだな、例えばこれから店に戻って誰とでもしたいとか、店に行かなくても色々な所に有る『したい人が集まる場所』に行ってみて知らない人としたいと思っているなら当てはまる気もするが……」  多分、洋幸は違うだろうと思いつつ解説してしまった。  紅色の頬が透明な感じで匂い立つような顔をオレに向けたユキは細い首を思いっきり横に振っている。  紅色の胡蝶蘭が強風に煽られた感じで、とても綺麗で艶やかだった。 「リョウとはしたいと思うけど、他の人じゃヤダ。 ――舞台の上から見てたけど、床でしている人もいたよね?複数の人とではなくてサ。  しかも物凄く丁寧で無理のない形でしていた。  あのさ、ショーだからああいうふうにするのは仕方ないって思ってたんだけど、そしてリョウと出来て良かったんだけど――ああいうふうに丁寧に愛されるってどういう気分なんだろ?とかお風呂場で思ってたら、湯あたりしたみたいになっちゃった。  そして身体のあちこちがムズムズして熱くなった。ココとか」  ユキの紅色に細い指が乳首を見せつけるように弾いている。ユキにはその効果が分からないっぽい感じだったが、自らを慰めているような指の動きは物凄くクるものがある。 「門の中にも指を入れてみてくれ……。バスルームでちゃんと掻き出せたかどうか確かめないと、な」  そんな大義名分をすんなりと信じたのか、ユキは綺麗に身体を反転させると、お尻の奥に指を入れてVの角度を広くする。  多分、バスルームで必死に出したのだろう。指の動きは滑らかで、そしてエレガントだった。  詩織莉さんのような女王様然とした雰囲気はまだ持っていないけど――そしてそもそもユキにそんなモノを求めてもいない――お城の奥に育った王女様が何だか「いけない」お遊戯をしているようで物凄くそそる。 「洋幸、ベッドに行こう……。身体が大丈夫そうなら、だが……」  ショーの「演出」のせいで随分無理をさせた。だからユキだって相当疲れているハズだ。  それに精神的にも「初めて」の体験だけでなくて、屋敷から連れ出された恐怖感とかも加わって。  それこそユキのお母さんが泣くほど心配していたというのは、かなり荒々しくされたに違いないのだから。 「うん。とっても嬉しい。ユリさんが言ってたけど、モノみたいに乱暴に扱われるのも凄くイイけど、宝物みたいに丁寧にされるのは違った意味で素敵なんだって……。お姫様になったみたいな気分が味わえるからって」  そんな可愛い言葉を告げるユキの唇に唇を重ねた。 「お姫様じゃなくて……、王女様を抱くように愛してみせる。  それで良い……か?」  ユキの切れ長な目が清廉かつ艶めいた煌めきを放っている。 「洋幸じゃなくて……リョウにはユキって呼んで欲しい、な。  だって、その名前をいっぱい呼んで、色々なことを教えてくれたのがリョウだから。  リョウにだけはユキって呼んでもらいたい。ダメかな?」  薄紅色の唇が健気な言葉の花を咲かせている。 「ユキ、愛している。ショーじゃなくて、恋人としての行為をしよう、フカフカのベッドの上で」  そう低く甘く告げながら強く細い身体を抱き締めると、ユキの息子がオレの足に当たって心地よい熱と甘い硬さを伝えてくれる。 「僕もリョウを愛している、よ。寝室はどこ?  これが、お姫様……じゃなくて、王女様気分かぁ……」  清楚な色香しか纏っていないユキの細い身体を横抱きにしていわゆる「お姫様抱っこ」をして運んでいると、ユキの唇がオレに近付いて来てそんな言葉を紡いでいる、花のような笑顔と共に。 「今度は王女様気分を充分味わわせてやるので、ユキは何もしなくて良いからな。  ただ、感じたらそのまま声に出して貰えればそれだけでイイ。  それと、リョウは店でしか使っていない源氏名で、本名は……。今となっては親も呼んでくれない名前だが。  何せ、この職業に就いたと明かしたら親子の縁を切られた……。お硬い市役所務めの親父と専業主婦のお袋には受け入れがたい職種だったし。  ま、高校と大学の時にも散々やんちゃをしてその度に迷惑を掛けたし、しかもホストなんてチャラチャラした仕事は仕事とは言わないとかキレられた。  実家にはそれきり帰っていないんで」  ユキをベッドに丁重な仕草で横たわらせながら言った。白いシーツの上に薄紅色の花が咲いたようになった。しかも乳首とか息子に触れるとしなやかに反る綺麗な花だ。 「リョウの本名って何?」  服を脱ぎながらユキにしか言う積もりのない本名を口に出した。

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