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第45話

「――そういう真剣な告白を聞いたのは初めて……だな……」  ユキが驚いたように幾分切れ長の黒い瞳を瞠っている。 「だって、リョウとしてお店で働いているんだよね?だったらさ、そんな言葉聞き慣れているんじゃない?ユリさんが『トイレいやホテルでも良いが』とか言って毎晩のように複数人に誘われるのと同じで」  ユリはゲイバーのナンバー1といった感じだったが――オレは何となく嫌な感じがしていたが、直感めいたものだけで証拠などはないのでユキに伝える積りはなかったが――「その行為」が三度の飯よりも好きなタイプらしい、しかも複数人と致すのが。 「あっ、そこもっ、気持ちイイっ。――乳首の方がジンジンしているけど……」  耳朶の裏側もユキが感じる場所らしい。  当たり前だが感じる場所は人によって違うのでそういうのを探していくのも随分久しぶりのような気がする。 「ユキの梅の花のような乳首も可愛いな……最初は桜色だったのに、今は紅色に染まっていて……。どうして欲しい?」  指を小さな乳首に添えるだけにして、ユキの答えを待つ。こういう行為は肉体全部を使ったコミュニュケーションなので、ユキの答え次第で変えなければならない。 「優しく摘まんで、先っぽを指でグリグリって……して欲しい……な」  まだ疼いていると言っていたが、その程度で大丈夫なのか?とも思ったが、ユキは正真正銘この行為が初めてなので――そして詩織莉、いや本名栞さんが望んでやまなかった「愛の有る初めて」と言った方がより正確だろう。  詩織莉さんの日本の女神のようなミステリアスさとか古典的な美しさの中にもどこか影が有るみたいなことを書いていた週刊誌もあるが、そんな深刻なトラウマを抱えていたとは知らなかった。  ただ、今夜の件で随分軽減されたと思うので本人の気持ち的には楽になるハズだ、多分。  専門家でないと分からないのであくまで素人判断だが。 「こう……か?」  耳朶の後ろに舌を這わせながら硬く尖った場所を摘まんでその弾力を堪能しながら先端部分を強く押しながら指を動かした。 「あんっ……イイっ……それ、スゴクっ感じるっ!!」  ユキの声も甘い花の精のように寝室の空気を紅色に染めていくような感じだった。 「――先程の話だが、続けて良いか?それとも本格的に始めようか?」  ユキの若さではいくらでも出来るだろう。かつてオレがそうだったように。  ただ、オレの方はランナーズハイが続いているからと言ってそんなに立て続けには出来ない、悲しいことに。 「んっ……。乳首と乳輪を触りながら話しを聞きたいな。  リョウ――じゃない、シンの仕事の話とか。  どうしてユリさんみたいに男性向けの仕事をしているのではなくて、女性相手の方を選んだのとか。  ユリさんは女役――ネコって言うんだっけ?が好きみたいで、僕もそうだと思うけど、逆の人もたくさん居るってユリさんに聞いた。だから需要と供給のバランスが取れているとか」  需要と供給のバランス――そういう言葉がユキの可憐な唇から出るとは思っていなかった。いや、ユキが充分過ぎるほどに聡明で理知的なのは知っているが、教育は受けたことがないと聞いていたので。 「需要と供給のバランスで値段が決まるのを良く知っていたな……」  ツンと立った場所を二つとも押しつぶすような感じで愛すると、ユキは血統書付きの猫のような高貴な感じで甘い声を上げているのも可愛過ぎる。 「その程度は。一応商学部だし……。通ってないけど、教科書というか教授の本なのかな?とにかくその講座に指定されている本はお父様が全部買ってくれたので読んでいた。  ウチは史学科とか国文科がごく一部では有名な大学なんだけど、お父様も一応は会社を経営しているし、僕も――その気はなかったのだけど――経営学部か商学部を選びなさいって言われたので」  そっちの業界のことは又聞きでしか知らない。ただ、ウチの店でもキャバ嬢や泡姫のような人を「太客」として持っている後輩は居る。自由になるお金はその辺のOLとはケタ違いだからという理由で。  そして黙認というよりむしろ奨励されている枕営業の――オレは一切断っていて、むしろその方が良いと言ってくれるお客さんが多いのが有り難い――時に泡姫は覚せい剤を使用するというのも割と良く聞く話しだ。ウチの従業員がそれをすれば一回でクビにされるが。  どうやら彼女達は仕事として「そういう行為」をしているので、特別な人との時にそういう薬に頼るらしい。  そんな薬を扱っているのは漏れなくユキの実家みたいな組織なので自ずから色々なウワサは入って来る。  それにユキが「通ったこと」になっている学校も「麗しく美しい日本の伝統を守るべきだ」とかの理念の有る学校だろう。良く「皇国何とか会」とかが通行人の迷惑なんて知ったことではないというくらいのボリュームで軍歌とかを演奏しながら走っているが、ああいうのも根っこは同じと聞いたことがある。 「そうなのか?商学部?経営学部どっちなんだ」  ふと興味をそそられて聞いてみることにした。 「経営学部だね、一応。シンは大学に行ったって言ってなかったっけ?」  オレもムラムラした時には「出会いを求める」場所に行って手軽に発散させてきた。そういう相手は用が終われば即さよならだったので、お互いのことを深く知るための会話も新鮮だった。 「ああ、行ったな。ただ、ユキの大学とは違った意味で知名度はない」  ユキが切れ長の紅を引いたような眼差しでオレの顔を見て来た。「違った意味」というのが分からなかったのだろう。  その紅色の眼差しをもっと鮮やかな紅に変えたくて、乳首を強めに摘まんだ。 「んっ……それも気持ち……イイ」

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