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第110話
「有難うございました。ただ今戻りました。ユキの具合はどうですか?」
物置っぽい感じで要らない荷物とか客から貰った物の空箱などが散らかっていた部屋がなんだか綺麗に整理整頓までされていてビックリした。
単なる運転手かと思っていたが、流石は綺麗好きの――漠然としたイメージだが――看護師の資格を持っている人だけあるなと思った。
それに、オレのリビングから運んできたソファーの上で昏々と眠っているユキの顔を見て安心してしまう。
「いえ、これも仕事ですから大丈夫です。
このお部屋にはたくさんソファーが有って助かりました」
ユキの華奢な手首を押さえて脈拍を計りながら喋っている男性の看護師はよほど有能なのだろう。
オレのダチが盗んだバイクで走ってコケたという間抜けな事故の時に見舞いに行った。
その時にちょうど鬼のように怖い看護師さんが時計を見ながら脈を図っていて、オレが話しかけると「秒を間違っちゃうじゃない!!静かに出来ないのっ!!」とか怒鳴られた記憶がある。
オレは世界一正確だとか言われている腕時計を着けてはいる。しかし、大雑把な時間しか見ないのでそういう意味では宝の持ち腐れのような気もするが、腕時計は男の名刺代わりなのでそっちのほうで重宝させてもらっているが。
「脈拍はやや早いですが、摂取させられた薬剤のことを考えるとこの程度でしょうね……」
ああ、そうかセック〇ドラッグは「そういう行為」の時に物凄く敏感になるドラッグだし、詩織莉さんは過剰に摂取したら心臓がヤバいみたいな話をしていた。
だから脈拍が早くなるのも納得出来る。
「あ、もうオレが見ますので大丈夫です」
120キロ越えとかいう、オレには人類として信じられない巨体も運べるとはいえ、この人が居てくれなかったらオレもかなりの体力を消耗したであることは想像に難くない。
だから財布を出してチップみたいなものを渡そうとした。
ちなみにオレの財布にはナンバー1ホストとして恥ずかしくないだけの紙幣が入っている。諭吉さんがだいたい100人はいる程度には。
そういう見栄を張ってナンボの商売なので後輩がオレを見習うようにという「教育効果」も狙えというのが執行部に上がった前ナンバー1ホストの先輩の教えだった。
カードも使ってはいるものの、それは財布から抜いて出さないと分からないので現ナマが一番だとか。
分厚くなってしまっている財布の中から一枚を抜いて差し出した。
「裸で悪いのですが、今までの看病代ということで……」
付き添いの看護師を雇ったらなんでも時給5千円はするとか聞いていたし、この最上階まで運んでくれたことの感謝を込めて無理やり手渡した。
多分、チップ的なものは病院でNGらしく遠慮しながらだったが。
「有難うございました。ではお大事になさってください」
ペコリと頭を下げて諭吉一枚を受け取った彼はユキの容態を案じるような眼差しで一瞥すると部屋から出て行った。
このマンションに後輩が来て雑魚寝させることが出来るようにと――寝室も客用寝室も有るがそれだけでは賄いきれないほどの人数が来ることもあったので――クッションをたくさん用意していて良かったなと思いながら、ユキの寝顔を見つめていた。
起きたらまずはセック〇ドラックの効果が現れると新田先生に聞いていたので、手錠は必要ないかも知れないと思いつつも、紙袋から手錠と足かせ(?)を取り出して片方ずつ付けることにして、病院から着ていた服をそっと脱がせた。
パジャマとは異なって――多分医者の手間を取らせないためだろうが――浴衣状になっているのが有難い。ユキが目覚める気配のないことも分かったのでこの隙をついて身体を改めることにした。
微かに消毒用のアルコールの香りが漂っているのは新田先生が手当てを施した名残だろう。
白磁のような肌とか可愛らしくツンと立った乳首の色は咲きたての染井吉野のような初々しいピンク色だった。
生理現象とか寒くても乳首が立つことは有るけれど、多分ユキの場合は薬のせいだろう。
五感が物凄く敏感に――もともとユキの素肌は敏感がが、忌々しい薬のせいで増幅されているだろう――なっているんだな……と細心の注意を払って身体のあちこちを見ていく。
最も気になっていたユキの、一晩で性器に変わってしまったお尻の穴をそっと開けた。
薬用アルコールの香りもユキの身体から発せられるとなんだか慕わしくて懐かしい思いがするのはオレがユキのことを物凄く愛しているからだろう。
オレの記憶に有るぷっくりと薄紅色に染まっているユキの可愛い穴だったが、さらに紅の色になっているのは、あのインラン・バカ・ユリとかが用意を施したからだろう。
ただ、道具くらいは挿れられたのかもしれないが、本番とかはされていないっぽいのが救いといえば救いだった。
オレとの行為は待ち望んでくれている感のあるユキだったが、それ以外の人間に「致される」のは心にも身体にも傷を付けるだろうから。
八重桜の色に染まったユキの可愛い穴をしげしげと見てしまう。ぷっくりと花が開いている感じだったし、多分薬のせいだろうが微かに、そして物欲しげに動いているから尚更に。
しかし47時間は「そういう」行為をしてはいけないと新田先生に言われていたし、セック〇の時に、薬の効果以上の快楽を与えられそうにない。
いや、それはオレが下手とかそういう意味ではなくてセック〇ドラッグで捕まった芸能人が何度も逮捕されていることからも良く分かる。
ユキが微かに身じろぎをした。
どうやら目覚めが近いらしい。
ユキの綺麗な肌に傷を付けたくなかったので、家に有ったタオルの中で最も柔らかいものを手と足首に巻いてから忍びない思いで手足を拘束した。
タオルがクッションになって跡が残らないと「ソフトなSMが好き」とかいうお客さんに「枕」をしている同僚から聞いた豆知識だった。
パチリという感じでユキの長い睫毛が扇のように開いた。
「ユキ、大丈夫か?何か飲むか?水と紅茶、スポーツドリンクも有るが」
しばらくの間無言で辺りをきょろきょろと見まわしていたユキだったが、紅色の唇が開いた。
「リョウの部屋……だよね?」
この部屋は当然ながら見せていないのでユキの疑問も尤もだった。
そしてちゃんと意識というか理性が有ることに内心でため息を零した。
「そうだ。ユキには見せていなかった部屋だが」
ユキの花のような唇に軽いキスを落としながら――この程度のスキンシップは大丈夫だろう――「お帰り」と囁いた。
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