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第120話

 ユキの小さな穴から白い液が飛び散っているのを見ることが出来たのは何だか役得のような気もする。普通の「そういう行為」の時にそんな光景を拝んだことは当然ない。  しかし、そんな細やかな役得に浸る間もなく――ユキの身体から忌まわしい薬が抜けた後に、心行くまでさっきの「絶景」を堪能しようと心に誓いつつだったが――絶頂を極めたユキの紅色の身体を見ることにした。  床の上にぺたりと身体を預けていたものの、お尻の穴には指が三本も入ったままという乱れた身体とか、紅色の腹部が白い粘液を載せて激しく動いているのも壮絶に色っぽかった。  ユキを――昨日「そういう行為」が初めてだったにも関わらず乱れてくれたのも嬉しかったが――好きな理由の第一が綺麗とか、そういう見た目の問題ではなくて頭の切れるところとか、ぼんやりしているようにしか見えないのに色々と考えているという腹の据わった人間だからだった。  確かに整った古典的な顔は上品な美しさを持ってはいるけれども、そしてユキには悪いが詩織莉さんの方が整っていると思う。  これはオレだけの意見ではなくて百人の男女にランダムにインタビューしたら八割がたの答えが詩織莉さんを選ぶだろう。  それにユキも度胸も据わっているものの、腹違いの兄弟でもばっちりと性格と外見も血の繋がりを感じてしまう佇まいと知性は詩織莉さんも持ち合わせている。  ま、オレの場合女性に「そういう」下心を持てないだけで、ユキの方が断然好みだったし、オレに開発された身体は一夜にして淫らに変わったと思うが、それでも硬質な輝きを宿している。  そんなユキがしどけない紅色の腹部に白い液を散らして横たわっているのはギャップが有って物凄く綺麗で淫らだった。  第三者というか客観的に見たら姉である詩織莉さんの方が綺麗だと言われるだろうが、そんなことはむしろどうでも良かった。  そんなことを考えてしまったのは、恋人でもあるユキのあられもない痴態を「その気」になって見入ってしまうからだった。  かさついてしまっている――ちなみにオレは唇の保湿にも職業柄、気を配っている――唇を舌で湿らせながらそんなことを考えないと思わず手と身体をユキの一糸纏わない身体に近寄らせて、そして新田先生のアドバイスを破ってしまいそうになる衝動に駆られてしまいそうだったからだ。  どうすれば気を散らすことが出来るだろうか……と頭をフル回転させた。  時計をチラリと見たが、驚くほど時間が経っていないのにも腹が立ってしまったが。 「気持ち、良かったか?」  何時もよりも低い声で、そしてゆっくりと言葉を掛けた。  店の常連客には「リョウって顔も良いけれども、物凄いイケボ」と感嘆の溜め息とキャーという黄色い声は聞き慣れている。  声で逝かせよう。  そう思った。  新田先生は「身体、特に性感帯には触れてはダメだ」とか仰っていた。もちろん本番行為も厳禁だとも。  しかし、声については何も言っていなかった。  お客さんの中に女医さんが居るが、その女性の話によるとご臨終の時に最も長く残っているのが聴覚だし、女性の中には声だけで頂点を極める人が居るらしい。  その上、ユキの身体に一切触れずに逝かせることも出来そうな気がした。覚せい剤もどきの薬も関係なさそうだし、多分。素人考えだったけれども合っているだろう。 「うん……。とっても気持ち良かったよぉ。  でも、リョウさんの熱くて大きなモノをココに挿れた方が……もっとイイって思うけどっ……」  若いだけあって、一回極めたハズなのにもう天を衝くように復活している。  その先端部分にさっきの名残りの白濁の雫が宿っているのもとても魅惑的だった。  そしてユキは、もどかしそうに腰を浮かして、尻の穴を見せびらかすような感じで腰を浮かせている。  オレのように男にしか欲情しない人間でなくとも、アダ〇トDVDなどでも有りがちで男の夢と妄想を掻き立てるM字の足の運びが物凄くソソる。 「それはダメだ。  しかし、もっとイイコトをしてやるので、ユキはオレの声のままに振る舞っていればそれで良いだろう?」  取って置きの声を低音で囁いた、ねっとりと。  その声に合わせてユキはヒクリヒクリと身体をうねらせている。  桃色の肌とか、白い粘液が飛び散った腹部、そして物欲しそうに動いては指を挿れている場所も紅の花を咲かせているのも物凄くクル。  どう言えばユキをもっと感じさせることが出来て、そしてあわよくば昇天したまま失神させることが出来るだろうとある意味ムシの良い考えを必死に巡らせた。  オレには経験がなかったが、女の人が逝ってから気を失うというのはアダルトDVDではありがちな展開だったし、そういうのが単なるフィクションでないことを祈りたい。  それにユキが逝き過ぎて失神でもしてくれたら、少なくとも一時間程度の時間は稼げそうだ。  新田先生は48時間ほど経過させろと仰っていたので、なるべく時間を稼ぎたい一心だった。  何と言えば効果的だろうか?

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