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制裁が出会い2
「何を言っているんだ」
「あっ、聞こえませんでしたよね。すみません」
「いや聞こえてるよ」
一旦は力を抜いた氷雨だったが、ふたたび重心を片足にかけ、悠馬の背中をきしませた。氷雨のもくろみとは真逆に、悠馬は嬉しさのあまりこぼれそうになる笑みを必死でこらえていた。
「わたくし佐野悠馬は、従兄弟である桐生様に幼き頃より尊敬と憧れの念を抱いておりました。わたくしは咲城学園のルールを何もわかっておらず、先走った行動をしてしまいました。その反省の意思をここにあらわし、改めてわたくしは桐生様親衛隊に入隊させていただきたく思います」
「……本気か」
氷雨はため息混じりに問いかけた。それにいち早く反応したのは、悠馬ではなく今まで沈黙を守っていた周囲の者たちだった。
「隊長! 彼を入隊させるおつもりなんですか」
「僕は反対です。だってこの人は桐生様の従兄弟なんですよね? 桐生様に近すぎます。彼は親戚の集まりなどで頻繁に会うのでしょう」
「そうですよ、ずるいじゃないですか!」
やんややんやと喚く彼らは、桐生友也のファン集団──親衛隊と呼ばれる組織に属する者たちだった。
「佐野悠馬を入隊させるのは、僕としてもあまり気が進まない。しかしこのまま桐生様の周りをうろつかれ、当然のように桐生様とペチャクチャしゃべられちゃあ、なあ? そっちのほうが鬱陶しいだろ」
「確かに、それは……」
親衛隊長である氷雨の返答に、いち隊員の男はひるんだ。
「親衛隊に入隊させれば、佐野の行動を僕らが把握、けん制しやすくなる。ある種好都合じゃないか?」
「けん制」
「そう。僕が徹底的にいじめ抜いてやるよ」
氷雨はねばっこく言い、舌舐めずりをした。親衛隊員のうち何人かは目をそらし、何人かは恐怖に震えた。当の悠馬はというと、やはり一人だけ目元をほころばせていたのだった。早く、もっと、もっともっと氷雨にいじめてほしいと思っていたのだった。
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