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中等部をけん制3
「桐生、様。いまの忠告、そんなに不愉快でしたか」
「忠告そのものじゃなくて、俺は悠馬に怒ってるんだよ。あんなこと悠馬が言う必要ない」
「いや、でも、桐生様の生活をお守りするのが親衛隊に入った俺の使命なんで……」
「だからって制裁とか忠告とか、ああいうエグいことは他の奴に任せればいいだろう。悠馬だって理不尽な忠告なんか、したくないんじゃないのか?」
心配そうに問いかける友也。図星だった。悠馬の良心はたしかに痛んでいたからだ。
「俺はそんなせこい悠馬、見たくないよ。親衛隊には入っていてもいいけれど、悠馬の活動は俺をおっかけるだけにしたらどうだ」
「いや、それは、ちょっと」
悠馬は言葉をにごした。友也を追いかけるために親衛隊に入ったわけではなかったからだ。なかばなりゆきの入隊だったとはいえ、言わずもがな悠馬の目的は隊長の氷雨だった。もしも今後制裁や忠告の活動に参加しなかったら、氷雨と接する機会は激減するだろう。それでは本末転倒だった。
「桐生様、従兄弟としてご心配いただけるのは大変ありがたいです。しかし俺も、親衛隊に入ったからには自分の仕事をきっちりこなしたいです。たとえそれが、はた目から見たら綺麗なことでなくとも」
もっともらしい言葉をならべてみたが、本心はいたってシンプルだった。悠馬はただ、氷雨に近づきたかったのだった。
「悠馬は真面目だな。けれど嫌になったらいつでもやめていいんだ、無理はしないでくれ」
「大丈夫です。嫌になったりしませんから」
悠馬は心のなかでピースサインをした。一方友也は悠馬の発言に折れはしたものの、不満げに口を曲げていた。
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