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初夏にふる雹1

「知ってる? 八雲氷雨の制裁」 「聞いた聞いた、かなり引くわ。いくら生徒会長に近づいたからって、会長の従兄弟にやっちゃまずいだろ」 「いくら美人でもこればっかりは駄目だよねえ」 「八雲の親父さんもとっくに大臣おろされてるってのにな。いつまであのころの権力があると思ってんだよ」 「ちょっと、やめようよ。あれ八雲……!」 しーっ。うわさ話をしていた内のひとりが、口に人さし指をたてて合図した。彼らの視線の先には、壁にもたれかかった氷雨がいた。氷雨に一瞥されると、彼らは小さく悲鳴をあげて廊下を引き返した。  二宮金治郎じたての腕立て伏せについて、ものの一週間ですっかり高等部じゅうの噂になっていた。すでに友也の耳にも──おそらく尾ひれがついた話が──届いているだろうことは明白だった。  見舞いにも行っていないが、悠馬はあれで腰を痛めてコルセットをつけて生活しているとの話だった。口の横も縄で切り、痕にもなっているらしかった。しかし氷雨に反省の二文字は浮かばなかった。 「叱られてみるか、また」 自嘲的にひとりごちた氷雨の脳裏には、幼い自分と友也の姿が浮かんでいた。

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