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初夏にふる雹6

 それから彼らは六年生に進級し、無事に修学旅行を終えた。結局自由の女神をバックに写真を撮ったし、ニューヨークアンキース球団のステーキも食べた。例のアメリカ英語もたくさん教わり、氷雨も友也もめいっぱい楽しんだ。  しかし修学旅行から帰ってくると、氷雨は友也とあまり話さなかった。いや、意識しすぎて話せなかったのだった。  氷雨が友也への恋心を自覚してからは、友也に話しかけられてもうつむいて駆けだしてしまった。また、自分からはもちろん声をかけられなかった。  いったい何を話したらいいかわからない、赤面してしまったらどうしよう……。  このころの氷雨はうぶで、甘い愛情の芽生えなど、彼の心はもてあましてしまったのだった。  そんなふうに氷雨が友也をさける日が続き、友也はだんだんいらだってきた。そしてとうとう痺れを切らした友也が、氷雨に手をのばそうとした──けれどそんな友也の善意は、残念ながら氷雨に届くことはなかった。  修学旅行から一週間もしないうちに、新聞の一面記事をこんな文字がでかでかと飾った。  八雲大臣、ウラ金発覚!  氷雨の父がとある企業から個人的に援助を受けていたことが、マスコミにリークされたのだった。  結局秘書の独断によるもの、ということで秘書の責任とされお咎めなしとなったが、主要な大臣としての立場をしりぞくこととなった。  当然、氷雨の父は以前のような権力をふるえなくなった。議員辞職をまぬがれただけ幸いだったと言えよう。  初等部のころはたとえ最高学年になっても、生活の影にはいつも親がついていた。友也も例外ではなかった。友也の両親は、八雲氷雨と距離を置くように言った。 「八雲は関係ないだろ」 「関係あるよ、息子じゃないか。桐生グループがわいろに関わっている、なんて疑惑をかけられたらどうする」 友也の父がタバコを片手に言った。 「でも友達なのに」 友也が唇を噛んだ。そんな彼の肩を、母親がとんとんと叩いた。 「ねえ友也、悠馬くんに迷惑がかかってもいいの?」 友也はこの一言で、何も言えなくなってしまった。従兄弟にまで話が及ぶことが予想されたのは、それだけ八雲の名に影響力があったからだった。  友也の目には、つい先日遊んだばかりの悠馬の姿が見えているような気がした。ただでさえ皆の嫌がることばかり引き受ける悠馬を、どうしていっそう不幸にできるだろうか。  友也は氷雨ではなく、悠馬の手を取ったのだった。

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