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望まぬ罰則1
「3年A組の八雲氷雨くん、2年A組の佐野悠馬くん、放課後生徒会室へ来てください。繰り返します──」
翌日の朝、こんな校内放送があった。放課後になるとすぐに悠馬は生徒会室へ向かったが、なぜ呼び出されるのだろうと首をかしげていた。
「おい、デク」
「隊長」
向かう途中の廊下で、氷雨に後ろから声をかけられた。彼は苦い面持ちをしていた。
「とうとう桐生様の耳にも入ったか。今回は派手にやり過ぎたな」
「中等部への忠告の件ですか? でも今さらって思いますよね」
納得していない様子の悠馬に、氷雨は信じられないものを見る目で返した。
「デク、お前は自分がやられたことを忘れたのか。僕が加害者で被害者はお前、この間の腕立て伏せの件で呼び出されてるんだよ」
「ああ、あのおしおきプレ……二宮金次郎じたてのアレですね。アレは俺がぬけがけしたのが悪かったんでしょう」
「それはそうなんだけど──お前はコルセットも着けてたみたいだし、顔も怪我してただろ」
「そうなんですよね、コルセット数日で外れちゃったんですよ。顔はまだ治りませんけれど、ずっと残るような痕にはならないんですって」
残念です、と続きそうな言い方だった。氷雨と悠馬の会話はどうも噛みあっていない感じがした。悠馬は怪我をさせられたことを、むしろ楽しんでいるようだったからだ。
そんなことを話していたら、目的の場所についた。氷雨は三度控えめにノックをした。
「入ってくれ」
中から友也の声がした。穏やかではない色を含んでいた。
「失礼します」
「八雲。君は悠馬──佐野悠馬に、ひどい体罰を行ったそうだな」
入るなり、デスクの奥に腰かけたまま友也が氷雨を睨みあげた。怒気を多分に含んだまなざしだった。
「ひどい体罰ではなかったですよ」
友也の問いに対してうなずいた氷雨の横から、悠馬が口を挟んだ。
「あのな。悠馬が腰を痛めて医務室経由でコルセットを支給されたこと、俺は知ってるんだぞ」
友也は苛立ちをあらわに言った。
「コルセットぐらい……」
「重傷だろ。それに顔の傷も」
「俺の顔なんか別にいいじゃないですか」
「よくない!」
友也が語気をあらげた。悠馬も氷雨も驚きに目をむいた。
「──とにかく、八雲は3週間の停学だ」
友也が書類を片手に言った。氷雨はぎゅっと唇を噛んだ。
「3週間……って、明けたら1週間後に中間テストじゃないですか!」
そう高い声を出したのは悠馬だった。友也はため息をついた。
「単位は足りているから留年はないし、八雲の元々の成績があれば、咲城大学にそのまま進学できるだろう」
「でも、希望の学部に行けるかどうか」
「それは八雲が悪いから仕方ないだろ。素行不良に違いないんだから」
友也が淡々と言った。いつもの彼らしくない言動だった。
そして氷雨からの視線を受け、友也は氷雨に顔を向けた。
「八雲。何か言いたそうだな」
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