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やつあたり大歓迎1

 生徒会室から出ると、ふたりは無言で廊下を歩いた。そして氷雨は、うつろな目で空き教室の扉をちらと見た。 「入りますか?」 悠馬の問いに、氷雨は眉をひそめた。意図がつかめなかったからだ。 「あの、俺にも言いたいことがあるんじゃないかと思って」 悠馬が控えめに言えば、氷雨は悠馬の手首を強くにぎって空き教室に悠馬を連れこんだ。  つかまれた悠馬の手首が甘く痛んだ。ああ、せっかんの予感がする! こんな状況だというに興奮してしまう自分は、やはり氷雨に指摘されたとおり頭がおかしいのだろうと思った。  腕を引かれて空き教室に入れば、悠馬は後ろ手にこっそり鍵をかけた。氷雨はそれに気づかないまま、壁際に悠馬を追いつめた。ようやく離された手首には、細い指の痕がついていた。 「なんで」 氷雨は壁に両手をつき、悠馬が逃げないようにした。流行りのドラマティックなシーンと体勢は同じだったが、氷雨は悠馬に恋情ではなく敵意を向けていたのが大きな違いだった。 「なんでお前ばっかり守られるの」 鼻声で氷雨は言った。彼はほとんど泣きそうだった。 「俺が従兄弟だからじゃないですか」 「僕だって友だちだったんだ!」 食ってかかった氷雨に、悠馬はわざとあわれむような視線を投げかけた。こうすれば氷雨の怒りを煽れるのではないかと思ったからだった。 「お前っ……!」 氷雨は悠馬の胸元をぐっと掴んだ。しかし氷雨は上背も体重も悠馬に劣っており、悠馬の身体を浮かせることはできなかった。それを見てまた悠馬がにたりと笑みをつくった。彼らしくないその表情は、それでも氷雨の感情をかき乱すのには充分なものだった。  いったん悠馬から手を離すも、すぐに氷雨は両手で悠馬の胸元を開くように掴み、左右に引き裂くようにした。ぶちぶちとシャツのボタンが取れて落ち、あらわになった悠馬の胸元に思い切り爪を立てて引っかいた。 「うぐ……」 「お前さえ、お前さえいなければ!」 氷雨は狂ったように悠馬を引っかき続けた。悠馬の胸元から腹にかけて、何度も何度も掻いた。傷が一本、また一本と増えるたび、悠馬の痛みと悦びは増大していった。  自然と息が荒くなった。ふくらみかけた下半身をどうおさめようかと考えていたが、氷雨の激情に満ちた美しい顔を目の前にしては、そんな器用なことはできそうもなかった。幸いにも氷雨は怒りに心身を支配されていたため、悠馬の情欲になど気づいていないようだった。

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