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やつあたり大歓迎2
そうして無数の傷痕が悠馬につけられたころ、氷雨は疲労からか悠馬を引っ掻く手を止めた。そして一歩下がり、悠馬の胸元とシャツに視線を移した。
シャツには悠馬の血がにじみ、生々しい赤茶を染みさせていた。氷雨は息をのんだ。きっと彼はそれほどまでに尋常でなかったのだ。
数秒、氷雨は悠馬のシャツに見入ってしまった。脳みその本能を司る箇所がじんと刺激された気がした。
悠馬はそんな氷雨を見て、彼の両肩をふいに強く掴んだ。そして力任せに身を回転させ、氷雨を壁に張りつけ、体勢を逆転させたのだった。元より体格の違いがある二人。悠馬には華奢な氷雨を振りまわすことなど造作もなかった。
驚きに目を見張る氷雨の首筋に、悠馬は唇を当てた。左手で氷雨の両手首をひとまとめにし、右手は氷雨の腰をおさえていた。
「なっ、何を……」
氷雨が力をこめて身じろごうとしてもびくともしなかった。悠馬はもう我慢ができないほどに氷雨を欲していたからだった。
柔らかい唇が首に触れると、氷雨は自分の意と反して身体をしならせた。
「デク! どういう、つもりだっ」
氷雨の抗議を示す視線も抗う手足も、悠馬には逆効果だった。氷雨が自分に敵意をあらわし、自分に生理的な嫌悪を向ければ向けるほど、悠馬の精神は熱いチョコレートのようにとろけていった。
悠馬は氷雨の反抗を無視したまま、ことを続けた。氷雨のジャケットを開き、ネクタイを丁寧にゆるめ、シャツのボタンを一つづつ外した。悠馬は氷雨の薄い胸をなで、不器用ながらも舌をはわせた。
氷雨は混乱していた。こいつは何をやっているんだ。しかし悠馬は口をきかなかったし、自分は欲望に身をさらわれそうでとても問いつめられる状況ではなかった。
耐えきれず甘い吐息が漏れ出るたび、悠馬が満足そうに笑んだ。まるで、こいつは僕を好きみたいじゃないか──。
悠馬はそのまま右手をずらし、氷雨のベルトに手をかけた。
「っ……馬鹿、やめろ!」
氷雨は悠馬を怒鳴りつけた。しかしいっこうに悠馬はそれを聞き入れようとしなかった。氷雨はそんな悠馬の様子に、ふつふつといっそうの怒りが湧いてきた。
こんな男にいいようにされてたまるか!
窮鼠猫を噛む、といったところか。氷雨は悠馬を思い切り蹴り上げた。思えば腰から手がはずされた今が、抜け出す最大のチャンスだった。
さしたる痛みはなかったものの、悠馬はひるんだ。その隙に氷雨は身体をくぐらせ、身を整えながら鍵を乱暴に開けて空き教室を後にした。
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