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執行部を追え1

 煽りすぎたな。もう少し生徒会でのやり取りを楽しんでから怒らせればよかった、と悠馬は後悔した。  生徒会の仕事は一応やるつもりだったのに、結局手伝わずに出てきてしまったことも気がかりだった。  執行部は部活動の予算を調査すると言っていたから、彼らに会えるかどうかわからないが各部室を回ってみようか──。  悠馬はそう思いつき、まずは一番ここから近い場所にある囲碁将棋部の部室を目指すことにした。  囲碁将棋部は所属するほとんどが幽霊部員だった。活動している一握りの部員は、皆ぱっとしない地味なメンツで、囲碁や将棋などやらずにスマートフォンのゲームで遊んでいるのが実情だった。  ここならばおそらく毎年変わらない予算だろうから、話もしやすいだろう。生徒会が来ている可能性は高いとにらんで、悠馬はその部室である多目的室をノックしようとした……が、偶然にも扉は開かれた。  真っ先に黒い髪が悠馬の視界に入った。手入れが行き届いたレイヤーミディアムヘアは見まごうことがない、氷雨のものだった。  氷雨は悠馬を見てぎょっとしたが、すぐにすました顔を作って廊下へと歩を進めた。彼の後ろには二人、親衛隊員がついていた。 「待ってください! どうして親衛隊がここに?」 「お前に答える義理はない」 氷雨の腕を掴もうとしたが、あっさり逆の手で払われてしまった。 「えっ……谷原くんと立川くんは答えてくれるよね?」 悠馬はすがるように後ろの親衛隊員へ聞いた。後輩だったが、ふたりとも悠馬好みの美少年なので名前を覚えていたのだ。  しかし期待に反して谷原も立川も返事をしなかった。きっと氷雨が恐いのだろう。悠馬は仕方なくあきらめることにしたが、氷雨が片手に抱えたバインダーを見逃すことはなかった。  親衛隊の動向が気になるものの、生徒会の仕事も放棄するわけにはいかなかった。悠馬は扉をノックし直し、多目的室の中に入った。 「失礼します。あの、生徒会って来てました?」 問いかけたが返事はなかった。皆ゲームに夢中のようだ。意図的に無視されている可能性も大いにあったが。  仕方なしに悠馬はすごすごと次の部室を目指した。サッカー部やラグビー部や野球部の控え室、コート横に設置されたテニス部の小屋、体育館に併設されたバスケ部の部室。  文化部は吹奏楽部、軽音楽部、書道部、漫画研究部に新聞部までいくつもの部室を回ったが、生徒会に会うことはできなかった。また、どの生徒も執行部の来訪について教えてはくれなかった。

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