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ここでネタばらし1
えずく真似をしながら、氷雨は悠馬にさげすんだ視線を向けた。そして唐突に悠馬の首へ手を伸ばした。悠馬は自らの欲望にあらがえず、そのまま氷雨の細い指を受け入れた。
きゅ、と指が食い込めば、自然と悠馬の性器もふたたび膨らんだ。隠すことなどできなかった。
「やっぱりお前、興奮してるよな?」
確認するような氷雨の問いに、悠馬は首を振らなかった。氷雨はそれを肯定と取った。
「ど変態」
「……すみ、ません」
悠馬は苦しくなかったが声は途切れてしまった。
「もしかして今まで僕のことをさんざんおちょくってたのも、虐められたかったからか?」
「はい」
「最低。それで僕がどれだけ傷ついたかわかってるの?」
「申し訳ございません、でした」
傷つけたことを今さら反省してみせたとて遅かった。悠馬は自分の欲求を満たすことを優先してきたのだから。
「謝って済む問題じゃない。おおかた桐生が優しくて、お前の望むようにはいじめてくれないから、仕方なく僕で代用しようとしてたんだろ。僕がお前を踏むとき、桐生の姿を重ねてたんじゃないの」
「……はい」
悠馬はそれでもこりずに嘘をついた。ここで本当の気持ちを吐露したところで、叶うわけがないと思っていた。完全につながりを絶たれてしまうのならば、せめて、せめて友也を想う憎き相手のポジションでいたかった。
「マジでクズじゃん」
「そうです、クズです」
答えた悠馬の瞳がきらきら輝いていたため、氷雨は眉をひそめた。
「そうか、お前にとって罵倒はごほうびなんだな。んー……お前、ファーストキスはいつだった?」
脈絡のない甘酸っぱい質問に、悠馬はぽかんと口を開けた。
「答えろ」
「み、未経験です」
「そっか」
あいづちを打ったかと思えば、氷雨は悠馬の首から手を離し、ぐいと顔を近づけた。悠馬が目をぱちくりさせていると、そんな彼の頭を力強くつかんで、氷雨は悠馬の唇にキスをしたのだった。
氷雨のやわらかい唇は、彼の性格と真逆にふわふわしていて優しい味がした。悠馬がうっとりと目をつぶると、氷雨はそっと唇を離した。
「ファーストキス奪われてショックだった?」
得意げに言いながら、氷雨は自分の口元を腕でぬぐった。
「しょ、あ、えっ、あ」
悠馬は顔じゅうに紅葉を散らし、金魚のように口をぱくぱくさせていた。
氷雨はそんな悠馬の姿がおかしくてたまらなくなり、もっと動揺する様を見たいと悠馬の縄をほどいたのだった。
「残念だったなー、桐生とキスできなくて。お前意外とファーストキスとかこだわるタイプだろ? 好きな人とできなかったってずっと後悔するんだろうな」
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