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思いきり甘やかして2
悠馬が氷雨の舌に舌をからめると、氷雨はとろけそうに目を細めた。なんだか甘い味がする。深いキスをするだけで、どうしてこんなに気持ちいいんだろう。
「今、初めてキスしたときと同じ味がしました」
唇が離れてからうっとりと目を細めて悠馬が言った。
「初めてってあの時の? お前の顔酷かったよな」
「だって嬉しすぎて死ぬかと思ったんですよ」
「なら僕が問いつめた時にとっとと好きだって認めればよかったろ」
「認めたってフラれると思ってたんです」
「認めなくてもフッたから」
そう言ってけらけら笑う氷雨の口を悠馬は口でふさいだ。やがて唇を外した悠馬は真剣な顔でこう続けた。
「もうフラせません」
「何その自信」
「……フラせないから」
悠馬はあえて敬語を崩し、氷雨の指に自身の指をきつくからめた。
「生意気」
氷雨はいたく上機嫌そうにつぶやき、悠馬に軽いキスを返した。
それが合図になったように、悠馬は氷雨の要望どおり彼をとことん甘やかすように抱いた。氷雨が身体を強くしならせる部分を責めたて、指をすべらせ、愛の言葉をたくさんささやいた。
「氷雨、愛してる」
つい、僕も、なんて答えてしまいそうになった。もうどちらが嘘で何が意地なんだかてんでわからない。ただただ濃厚なストロベリーとチョコレートが溶け合うドルチェのように、二人は互いの肌を触れ合わせた。
悠馬に押し倒された姿勢のときは、氷雨は悠馬の身体に両足をからめた。座って互いに向き合う姿勢のときは、氷雨は悠馬の胸に頬を寄せた。どんな姿勢の時でも、氷雨は悠馬の背に思いきり爪を立てて痕を残した。それが氷雨の精一杯の愛情表現で、悠馬はそのどれもを心底嬉しそうに享受したのだった。
「せんぱい……っ」
「……呼び捨てにしろ、悠馬」
「ゆ、悠馬って言った」
「嫌なの? クズに戻す?」
「クズもいいけど悠馬がいいです!」
「悠馬」
「……氷雨」
互いの名を呼ぶと恋しくて胸がきゅうっと締めつけられるような気がした。それは激しく鞭で叩いてもきつく縄で縛っても得られなかった感覚だった。
どれだけ舌と舌をからめても、どれだけ舌を這わせても触れられても、悠馬も氷雨もぜんぜん満足できなかった。いつからこんなに欲張りになったんだろう。
「もう一回……」
「無理」
「名残惜しいなあ」
悠馬は汗だくの身体で氷雨に頬を寄せて言った。氷雨は悠馬の髪に手を伸ばし、ぐしゃぐしゃに乱した。
「また朝すればいい」
そんな氷雨の言葉にたまらなくなり、悠馬は彼をきつくきつく抱きしめた。
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