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会いたい

「何度か繰り返しキスしながら、ブラ越しにおっぱい揉んだら……すげぇカンジてきてさ………」 身を乗り出して聞く男子達に、セックスの内容を抵抗なく話す大空。 その声は、容赦なく僕の耳に入り…… 「……」 今すぐここを離れたい。 これ以上、聞きたく、ない……のに…… 「おい、大空!」 僕の肩を抱きながら、今井が声を張り上げる。 大空の話に夢中だった男子──五人のうちの三人が、今井の方へと振り返った。 「揉んだって、こうやってか?」 「……っ、」 集まる視線の中。 スクールシャツの上から、今井の武骨で大きな手が僕の平たい胸を包み、上下に揺さぶって揉みしだく。 その大胆な仕草に、男子達が奇声を上げ、異様に場が盛り上がった。 「……」 息が、止まる。 恥ずかしくて……俯く。 その視界の端に映るのは、チラッと視線を向ける、大空── 「……あー。もっと、優しくな」 口の片端を持ち上げ、飄々と答える。その瞳が、僕を軽蔑した色に変わったような気がした。 大空の一言で、その場はもっと盛り上がった。 セックス話はいつしか、取材会見のような質問形式へと切り替わる。 「コンドーム付けたタイミング、教えろよ」 「……キスしながら……だった、な。 つっても、上の口じゃねーぞ」 「じゃねぇって、……何処だよ!」 「何処にしてんだよ、オイ」 「……決まってんだろ、バーカ」 「………」 ついていけない、ノリ。 男子達に笑顔で返す、いつもの大空の普通の反応。 『カムフラージュかもね』 僕は一体、何を期待していたんだろう…… この胸の内は、言葉にならない。 異物が詰まったように、胸が苦しくて……まともに息が出来ない。 どうやってあの場にいたのか。どんな表情でいたのか。どう離れたのか……よく、覚えていない。 考えてみれば、大空が彼女と付き合って……もうすぐ三ヶ月。 そういう事がない方が……不自然、なのかもしれない。 ──だけど。 想像なんて、したくない。 ……聞きたくなんか、なかった。 * 〈ミキさん〉 昼休み。 三階の渡り廊下を通り、北校舎の薄暗い廊下に出る。 人気のない空き教室に入れば、そこは建設塗料特有の臭いが鼻をつき、息苦しさを感じた。 〈気付いたら、返事ください〉 メッセージのやり取りをするのは、いつも夜の十時以降。 しかも、出会い系サイト内のプライベートエリア。 通知は、されていると思う。 だけど見て貰える可能性は、低い。 それでも……堪えられなかった。 〈……助けて、下さい〉 〈会って、話がしたいです〉

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