15 / 112

初対面

僕の心情を知ってか、知らずか……雨はまだ、しとしとと降り続いている。 待ち合わせ場所は、学校の最寄り駅からひと区間先の駅。多分、10分もしない。 改札を抜けて西口の階段を下りると直ぐ目に付く、ファーストフード店。 その店の二階。窓際のカウンター席。 その端っこに座り、濡れたガラス越しに映る雨の景色をぼんやりと眺めていた。 「こんにちは」 背後から聞こえる、優しげな男性の声。 雨の滴が不規則に伝って流れ落ちるガラス壁に、ぼんやりと男性の輪郭が映って、僕のと重なる。 「アメくん……だよね?」 振り返って、驚いた。 そこに居たのは、大人の雰囲気が漂う、スーツ姿の男性だった。 勝手に僕は……本当に勝手に、二十歳前後の大学生だとばかり、思っていたから。 「……ミキ、さん……?」 「うん、そうだよ。……ごめんね。こんなオジサンで、幻滅したでしょ」 ミキさんは、笑顔を見せながら申し訳なさそうに視線を下げる。 「……」 今年三十五歳の父より、少し若い感じ……かな。 思ってた以上に年上だけど、整った顔立ちは格好良くて。笑った時の表情や声質が、何処となく大空に似ていた。 「い、いえ……」 ドキッとして顔を逸らす。 俯いたままでいれば、コトン…とカウンターにトレイが置かれた。 「……隣、いいかな?」 「は、はい……」 さらさらと降りしきる、細い雨。 灰色の世界に、行き交う人々のシルエット。赤、青、緑、白……色鮮やかなアンブレラ。 ふわりと漂う、コーヒーの香り。 チラリと隣を見れば、カップをソーサーに戻すミキさんが、此方に気付いて視線を向ける。 「……あの、すみません。 仕事中……だったんですか?」 「ああ。気にしないで。今日はもう、このまま直帰だから」 「……」 「それより、急に会いたいって。どうしたの? ……ソラくんと、何かあった?」 柔らかく微笑むミキさんは、僕の話を受け止めようとしてくれていた。 その姿勢は、ネット世界のミキさんそのもので。 とても誠実で。優しくて。 少しも、イヤラシさを感じない。 会いたいって言ったら、そういう目的なんじゃないかって思われても、仕方がないのに。 あの出会い系サイトは、元々、そういう目的の場所だから。 「………」 ……違う。 ミキさんから、そんな雰囲気が一切感じないのは…… 最初から、子供の僕なんかに……興味が無かったから…… それとも。実際に会って……幻滅した……とか…… 「……あの、」 胸が、ざわざわする。 必要となんか、されていない…… ……僕は、誰にも…… 「僕のこと……実際に見て……どう、ですか……?」

ともだちにシェアしよう!