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永遠の彼女
授業を受ける気になんて、ならなかった。受けたとしても、全く身に入らなかったと思う。
だから、丁度良かった。
「……悪いな」
一階の渡り廊下を通り過ぎた先にある、美術室。そこを覗き、誰もいない事を確認してから、今井が先に足を踏み入れる。
画材や絵具などの、特有の匂い。
今井の後を付いていけば、教室の真ん中辺りで立ち止まる。
「城崎の事だけど──」
いきなりの本題に、びくっと肩が震える。
「──あいつ、佐藤と付き合ってただろ?」
「……」
「付き合って……は、いたけど。本当に好きだったのは………お前、なんだよ」
今井の口から吐かれた言葉に弾かれ、顔を上げる。
目が合った瞬間、今井が視線を逸らし、ガシガシと後頭部を掻く。
『実雨の事……ずっと好きだったんだぜ』──大空の言葉が、声が、蘇り……僕の心を大きく、切なく震わせる。
──幻、じゃ……なかった……んだ……
細雨に打たれて濡れたのも。その中で、大空への想いを叫んだのも。……届かなくて、深く抉られた心の痛みも。
全部、僕の中にちゃんと刻まれているのに──大空があの時、本当は存在しなかったんじゃないかって……錯覚を起こしてて、よく解らなくなってた。
ちゃんとこの目で見て、大空の声をこの耳で聞いて……会話だって、交わしたのに──
「俺も、な。……実はずっと、お前の事狙ってて。それを、大空に見透かされてさ。
──アイツ、彼女いんのに邪魔してくるし。俺の目の前で、白石にベタベタすんのにもムカついて──」
「……」
「──だから、やり返してやったんだ。
仲間集めて、佐藤とヤった話しろって圧かけて。……で、わざとお前を引っ張り込んで、大空を苦しめた」
……あの時。
大空の話を聞きながら──今井が僕の肩に腕を回して……時折、顔を近付けてきて。
距離が、近すぎるとは、思ってたけど……そういう事だったんだ……
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