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永遠の彼女2
「でも、お前の方が辛そうな顔してたな。……あん時は、悪かった」
少しだけ頬を赤らめた今井が、腑が悪そうに台詞の最後を濁らせる。
「お前、あの後すぐ早退しただろ?
それで何となく……気付いちまった。認めたくはなかったけどな」
「……」
「……白石の気持ちに全然気付かねぇ大空に、心底ムカついてさ。
午後の授業フけて、アイツとやり合ったんだよ。
──白石を、今のまま中途半端にさせとくなら、俺が奪うってな」
「──!」
……あの時……そんな事が……
「したらアイツ、俺に言ったんだよ。
彼女とは別れるから……実雨にはぜってー手ぇ出すなって」
「……え……」
……大空。
どうして、そこまで想ってて……
……どうして……佐藤さんと……
目を伏せれば、下瞼に触れる事無く涙がぽろぽろと落ちる。
「………で、金曜日。──お前、キスマーク付けてきただろ?
それがまた火種になってさ。
大空に呼び出されて……今から佐藤と別れるから、黙って見てろって……」
「………」
……大空……
その時の光景が、見てもいないのに目に浮かぶ。
大空は、そこまで僕の事を……想って……
立っていられなくなって、膝から崩れ落ちる。
「………おい、大丈夫か?」
差し伸べられる、今井の手。
でも、それを取る気にはなれなくて……
借りていたままのハンドタオルで、濡れた目元を雑に拭う。
「………」
「佐藤は、別れたくないって散々ごねて、その場に泣き崩れて。
下校する頃には、また雨が降ってきてさ。『送って』って、大空にだだ捏ねだして。
………その帰り、だもんな」
今井の、深い溜め息。
「死人に口なしっつーか。
佐藤が言わない限り、永遠に大空の彼女……なんだよな」
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