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城崎大空2

『実雨、俺と組もうぜ……!』 ──それは、体育の時間での事。 ペアを組んで準備運動をする筈が、その相手が中々見つからなくて。一人ぽつんとつっ立っていれば、大きく手を振る大空が僕にそう声を掛けてくれた。 それだけでも、充分嬉しいのに。 初めて大空の両手に、触れられて…… 凄く、ドキドキした。 重なった手のひらと手のひら。そこに湿気と熱が籠もり、熱くて熱くて…… 正面にいる大空の顔を全然見られなくて……この胸を突き破ってしまいそうな程、心臓が激しく暴れ回っていた。 『ちっせぇ手だな』 そう呟いた大空は、僕の手を恋人繋ぎに直し、突然グンッと引っ張って…… 『……わっ!』 バランスを崩し、足が縺れ……そのまま大空の胸に飛び込む形になってしまった。 肌に伝わる体温。感じる息づかい。 瞬間、カァッと全身が熱くなり……体が硬直する。 『お前、マジでちっちゃくて……可愛いな』 『……っ、!』 大空が僕の背中に手を回し、ギュッとしてくる。 でも、その抱き締め方は、身体の小ささを確認するものでしかなくて…… 「……」 大空は時々、こういう思わせぶりな態度をしてくる。 『可愛い』って言葉も、普段からよく使ってくる。……多分、口癖なんだと思う。 解ってる。 大空が男の僕に、その気がない事くらい。 だけど、そんな事されてしまったら……もしかしてって期待してしまう自分がいて、情けない。 ……だって大空には、彼女がいるんだから。 《それは、期待しちゃうね》 〈……はい〉 《でも、期待してもいいんじゃないかな?》 ミキさんの言葉に、心臓が大きく跳ねる。 《僕も高校生の頃、好きな男の子にちょっかいを出して、気持ちを探った事が何度かあるよ。 その後、女の子から告白されて。カムフラージュで付き合ったんだけどね》 ……カムフラージュ。 もしそうだとしたら、どんなに良いだろう。 そう思ってしまうのは、僕の中でまだ消化しきれていない出来事があったから。

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