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花火大会 2
「………お前」
「え……」
険しい表情に変わった今井が、テーブルを乱暴に退かす。
──ガチャンッ!
派手な音を立てコップが落ち、床に飛び散る硝子の破片。それには一切目もくれず、大きな身体が僕に迫った。
「今、何考えてた……!」
ドスの利いた低い声。
蛇に睨まれた蛙のように、声も、瞬きも、息さえも……上手くできない……
ドサッ
大きな手に襲われ、乱暴に押し倒される。後頭部を床に強く打ち、鈍い傷みが深部に響く。
「………なぁ、実雨。お前は今、誰と付き合ってんだ!」
「……」
「答えろ!」
吊り上がった、鋭い目。
何が今井くんをそうさせてるのか……解らない。
……だって僕は、全て今井くんの望み通りにしている。
気が乗らない花火大会の誘いにも乗ったし、来たくもないこの部屋にも上がった。
……なのに、何で……
どうして……こんな、酷い事───
「──っ、」
言葉にならない叫びだけが渦巻き、胸の中につかえて出てこない。
身体が、震える。
……息が……上手くできない……
「解らねぇなら」
「……」
「この身体に、教え込んでやるよ──」
言うか言わないかの内に、乱暴にシャツが捲り上げられ──露わになった胸元に大きな手が這った。
……はぁ、はぁ、はぁ、
もう、何度されたんだろう……
擦れる痛みで息が止まり──時々、意識が遠退く。
汗と白濁液に塗れた、ベトベトの身体。
それを隅から隅まで貪り、嬲り尽くす。
僕の名を呼びながら何度も腸内 で果てる度に、今井くんが穏やかな顔付きに変わっていく……
「……」
約束、してくれたよね……
……次は……優しくする、って……
飽和状態の部屋。
朦朧とする意識。
ここから逃れられず……溺れてもがき苦しむ。
まるで僕は、
今井くんに飼い慣らされる──金魚……
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