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どういう関係?

熱したフライパンに溶いた卵液を流し込み、手早く薄く広げる。 籠もった空気と熱。それらを吐き出そうと、換気扇のスイッチを入れた。 「なに作ってんの?」 それまで携帯を弄っていた魁斗が立ち上がり、僕の背後に近付いて、肩越しから僕の手元を覗き込む。 「……オムライス、です」 「へぇ、美味そう」 「……」 「もしかして、俺の分も作ってくれてたりする?」 「………はい」 ケチャップで炒めたご飯を、薄焼き卵で包みながら答えると、背後に立つ魁斗の手が、僕の両肩に置かれる。 「みーたんてさ、尽くすタイプ?」 「……」 「でも、残念。こういう家庭的なオムライス、猛は食べないんだよね」 「………え」 『……美味いな』──あの時、今井くんはそう言って、涙を流しながら食べてくれた。 もし嫌いなら、そんな事言わないし……ましてやリクエストなんて、しない筈── 「何でか話してくれないから、本当の所は解んないんだけどさ。 大事にしてたハンカチとは逆に、何か嫌な思い出とかあると思うんだよね」 「………」 「例えば、前の家族と揃って食べた最後の食事が、オムライスだった……とか」 「──!」 ──そんな…… それじゃあ、あの時今井くんが泣いていたのは…… ……僕が、今井くんの嫌な過去を…… 「……」 オムライスを出された時、どんな気持ちだったんだろう。 一体、どんな気持ちで……食べたんだろう── 「……っ!」 突然、僕の襟足を掻き分けた指が項に触れ、びくんと肩が跳ねる。 「やけに蚊に刺されてんな……って思ってたけど。コレ、違うよね」 核心を突かれ、血の気が引く。 それまで落ち着いていた心臓がバクバクと暴れ……手が、止まる。 「みーたんの彼女、随分と嫉妬深いんだね」 「……」 「それとも、彼女じゃなくて……猛だったりして?」 「……」 軽い口調。 多分、冗談なんだろうけど…… こういうノリとか、嫌だ。 ……落ち着かない。 「………違います」 不安で、声が震える。 どうしたらいいか……解らない…… 「……今井くんとは……そういう関係じゃ……」 「じゃあ、どういう関係? 何でうちに飯作りに来たの?」 振り返って魁斗を見上げれば、間近で目が合う。 嫌味とか責める感じではなく、純粋に知りたいという真っ直ぐな瞳を向けていて── ───バンッ! その時、玄関のドアが勢い良く開いた。

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