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突然のメッセージ

……はぁ、はぁ、 逸る気持ちを抑え、少しひんやりとした夜風を切って走る。 それは、本当に偶然。 だけど凄いタイミングで。 帰り際の教室── 何の気なしに開いた、ゲイ専用の出会い系サイト。プロフィール画面にあるメッセージ一覧を確認していて、瞼が大きく持ち上がった。 『ミキ』 送信者の中にあった、二文字の名前。 リンクから飛んでみれば、間違いなく、プロフィール画像は樹さんのもので。 送信日時を確認すれば、ほんの数分前。 「……」 途端に蘇る、やり取りしていた頃の記憶──肌を重ねた、懐かしい温もり。優しい声。大空に似た匂い。 ついさっき、樹さんがこれを送信したんだと思ったら……僕のすぐ傍にいるような気さえし、胸が、身体が、熱くなっていく。 《良かったら、会いませんか?》 ──え ドクンッ、と大きく跳ねる心臓。 突然襲い掛かる高揚感。止まる息。 ミキさんのメッセージから、目が離せない。 携帯を持つ手の指先が痺れて……上手く、動かせない。 〈はい。ミキさんさえよければ〉 そう打ち込んで、送信ボタンをタップする。 その指先が、まだ震えてる。 淋しさを、また誰かで埋めようとしているだけなのかもしれない…… そう思ったら、今更ながらに足が竦む。 ……でも、会いたい。 会って、いっぱい話したい。 樹さんとさよならしてからの今までを。 ……全部、聞いて欲しい…… ネオン街にある、ファストフード店。 煌々とした店内は賑やかで。何だか居心地が悪い。 烏龍茶とフライドポテトの乗ったトレイを持ち、窓際のカウンター端に座る。 「……」 緊張で、落ち着かない。 そわそわしながら、ガラス壁の向こうを眺める。 大通りを往来する人々。学校帰りの学生達。楽しげな男女のグループ。帰りを急ぐ親子。 その中に混じる、サラリーマン。そのスーツ姿を見掛ける度に、樹さんだと錯覚し、無意識のうちに目で追ってしまう。 そのガラスにうっすらと映る自分が、何だか寂しげで。 俯いて、紙製カップに刺さったストローを弄りながら、心を落ち着かせる。 ………ねぇ、樹さん。 どうして突然、ゲイサイトを去ったの? どうして、また戻ってきたの? 最後に開いた日の夜──今井くんにここを見られたと解った後、樹さんとのプライベート空間が消えてしまっている事に気付いて。ショックで。 もう、返事が来ないと解っていても。 あの空間があったから、僕は…… まだ樹さんと、繋がっているような気がしていたのに…… 僕が、あんな事書いたから? 早々に、大空の友達と付き合うような、薄情な奴だと、呆れたから……? 今日、会ったら……どんな話をするんだろう。 樹さんは、どんな表情をみせてくれるんだろう。 そんな、期待と不安が入り混じったまま、カップを持ち上げ、ストローを咥える。 プルル…… と、その時。 突然、ポケットの中にある携帯が鳴り響く。

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