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意識

そんな筈、ない。 そういうのとは、全然違う。 だって、樹さんは大空のお父さんだし。 そもそも僕が好きなのは、大空だし…… ……それに、もし仮にそうだったとしても。 そんなの、許される筈ない…… 「………まぁ、いいや」 俯いたまま答えずにいれば、携帯灰皿に煙草を揉み消した魁斗が、柔らかな声を発しながら僕に優しく微笑む。 「そろそろ、帰ろっか……」 立ち上がってお尻を叩く。 缶コーヒーを豪快に傾ける魁斗が視界に入り、つられて空を見上げる。 周りがそんなに明るくないせいか、星がよく見える。綺麗な半月。ビルとビルに挟まれ、低い位置にあるせいか。いつもより大きく、模様まではっきりと見える。 これから満ちていくのか。それとも、欠けていくのか…… 先の事を思うと、不安で胸が苦しい。 「送ろっか?」 「……あ、全然……大丈夫です」 「そう?」 結局、一度も開けなかったミルクティー。それを、パーカーのポケットに仕舞う。 「じゃあね」と片手を軽く上げて立ち去る魁斗に、おずおずと手を振り返す。 「……」 ──好き。 僕が、樹さんを好き、だなんて── そんなの、全然……意識した事なんてなかった。 樹さんに抱く感情の全ては、大空に似ているせいだとばかり……思ってたから。 確かに。まだ顔も知らない……ネット上でやり取りをしていた時から、好意はあった。 でもそれは、僕の話を聞いてくれて、受け止めてくれたからで…… 「……」 もし、これが好きという感情なら…… 大空の時とは、全然違う。 だからこそ、違う筈なのに。 なのに……どうしてちゃんと、否定できなかったんだろう……

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