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衣装合わせ

××× 「………ねぇ、白石くん」 帰り支度をして席を立つ僕に、石田さんが話し掛ける。 学校全体が、文化祭ムードで盛り上がっている中、このクラスだけは何処か冷めていて。 教室内の飾り付けや衣装は、石田さんを中心に、熱心な一部の女子達によって進められていた。 その中には当然、佐藤さんの姿も。 「衣装とか一度合わせておきたいから、ちょっと残っててくれる?」 「……え、……うん」 手にしていた鞄を机上に置き、引いたままの椅子に座り直す。 他の人には声を掛けていないようで。同じ売り子係の人達が、帰りに何処へ寄ろうかと話しながら出て行く。 * ギャザーのたっぷり入った、パステルピンクのワンピース。きゅっと絞ったウエストライン。そのフロントには、紐で縛るタイプの可愛らしいリボン。 足下がスースーして、何だか変な感じ。 「……うん。いい感じ」 着替え終わり、背を向けたままの石田さんに声を掛けようとして、先に振り返られる。 「ごめんね。白石くんだけ、チェックが遅くなっちゃって」 「……、ううん……」 答えながら俯けば、近寄った石田さんが僕を下から覗き込む。 「ねぇ。この服、誰が選んだと思う?」 その表情は、どこか含んでいて。何て答えていいか解らずにいれば、石田さんの口角が緩く持ち上がり、得意気な顔付きに変わる。 「なんと、(たけ)くん。……意外でしょ?!」 「……」 「先週の日曜日、皆で集まった時にね。文化祭の衣装でも決めようかって話になって。 それでね。販売担当のみんなをイメージしながら、集まったみんなで服を選んでたんだけど……どうしても白石くんのだけが決まらなくて。そしたら、あの猛くんが、『白石(あいつ)には、これが似合う』って──」 「……」 今井くんが……そんな事…… 想像しただけで、恥ずかしい。 もう関係は終わった筈なのに……まだ僕が、今井くんの中で特別な存在になってるような気がして。 「……ねぇ。ちょっとだけ、化粧してみてもいい?」

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