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突然の告白
「だけど、一生お前を大空にやるつもりはねぇ」
寄せた眉根。力強い声色。
吊り上がった二つの瞳が、じっと僕を見据える。
「お前、自分が可愛いの……全然自覚してねぇだろ。
いつもは大人しくて、俯いてばっかいて目立たねぇ癖に。……よく見りゃ、その辺の女よりも可愛いくて。
キスした途端、その大きな目がトロンってなって、妙に色っぽいし。……エッチの時は、エロいしよ」
「……」
「……それに、だ。
あんだけの事をして、嫌われてもしょうがねぇ筈なのに。……別れようって言った俺に、泣いて縋りついてくるし。二学期が始まった後も、わざと冷たく突き放してんのに、うるうるさせた目でじぃっと見てくるしよ」
「……」
「……マジで、堪んねぇよ」
そんなに、僕……今井くんを見てた……?
瞬きもせず今井くんをじっと見つめていれば、それに耐えられなくなったのか……頬を赤らめた今井くんが、スッと視線を外す。
「──好きだ」
……え……
トクン……と小さく心臓が跳ねる。
「お前の、無自覚で無防備な所も。危なっかしい所も。……今でも大空を想ってる所も──全部」
頬がみるみる赤くなり、耳まで真っ赤に染まる。
吊り上がったままの瞳は、視線を外したまま揺れ動き、僅かに乱れた息を吐く唇が、意を決したように再び開く。
「もし……もし、だ。
この先、俺が大空みてぇに強くなって、実雨を支えられる男になれたら……
……そん時は、また俺と、一緒になってくれねぇか」
「──!」
心が、指先が、全身が………震える。
今井くん……
……どうして。
僕は、今井くんを傷付けてきたのに。
どうして……
そこまで、僕の事を……
瞬きをゆっくりひとつしながら、静かに俯く。
視界に映る、形見の指輪。
ずっと、あの頃に戻れたら良かったって思ってた。
少しずつ今井くんを知っていって、少しずつ好きになっていけたら、って……
……だけど、いざそれが現実を帯びてしまうと……怖い。
また今井くんを苛つかせて、傷付けてしまうんじゃないかって。
……また、あんな風に……
「……別に、今すぐどうこうって訳じゃねぇ」
「……」
「少し、考えといてくれ」
僕の空気を察したのか。
それだけ言うと、テーブルの端に置かれた伝票を掴み、席を立つ。
「……」
スッと、今井くんが僕の横を通り過ぎていく。
それを引き止める事もできず……徐に、テーブルの真ん中に置かれた指輪に手を伸ばす。
……ねぇ、大空……
僕は、どうしたらいい……?
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