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知らない過去4

「樹と最後に引き会わせたのは、その詫びのつもりだって……ほざいたんだ。 ……ふざけんなよ。お前と真奈美の間に子供が出来て、人前式まで済ませた後にそんな事言われて……俺にどうしろって言うんだよ……」 「……」 「……なぁ、そうだろ、樹……!!」 瞼を大きく開け、父が樹さんに縋るような目を向ける。 そこに、同意と救いを求める光を宿しながら。 「……お前とサヨナラした後、心に誓ったんだ。樹との未来が望めないなら、一人で生きていこうって。 なのに。……勝手にアパートに転がり込んできた愛桜が、俺の寝込みを襲いやがったんだ……! ……それで、妊娠したから責任取れって、毎日うんざりする程迫られて。仕方ねーから、望み通り……俺の心以外の全てをくれてやった……」 「──!」 ……そん、な…… 息が……できない。 胃の奥から、苦い水が迫り上がってくる。 突然の妊娠。望まない結婚。偽物の家族。 そこには最初から、愛情や絆の欠片すら無くて──母が、自分の望みを叶える為だけに、わざと僕を作ったのだとしたら…… ……こんな、残酷な事なんて……ない── 「……ッ、」 俯いたまま思い詰める僕の手が、きゅっと握られる。安心させるかのように、優しく。 それにぴくんと反応すれば、手のひらを合わせるように繋ぎ直され……樹さんの綺麗な指と僕の指とが交差し合う。 「籍を入れる前──これでも揉めたんだ。 でも、愛桜は……俺の心の中に、他の誰かがいたとしても構わない。何もしなくていい。ただ、傍にいて欲しい。……そう言ってきたんだ」 「……」 「なのに──俺の留守中、東生を勝手に家に連れ込んで、そういう事をしてた。……俺の布団を使ってな。 あからさまな所に痕跡を残して、事ある毎にわざとらしくアピールして…… ………俺を嫉妬させて、思い通りにしたかったんだろ。 でも、愛桜に一切の気持ちがない俺に、どうしろっていうんだよ……!」 「……」 東生──このアパートに来る度に、僕を蔑んだ目で見てきた人。 目尻が吊り上がって、酷く冷たい目──

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