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初めてのバイク2
「ほら、ちゃんと掴まれよ」
ヘルメットを被せて貰い、指示された通りにバイクの後ろに跨がる。
彼女が選んだデザインのものらしいそれは、ライトグレーにショッキングピンクのハート柄が沢山散りばめられていて……ちょっと、恥ずかしい。
「……う、うん……」
だけど、大空のお腹に手を回してしがみつくのは……もっと、恥ずかしい。
大空の背中から感じる温もり、匂い。
ドキドキし過ぎて、心臓が持たない。
エンジンが掛かる。ダイレクトに伝わってくる、バイクの振動。
「……いくぞ!」
大空が、お腹に回した僕の腕を二回タップする。それに答えるよう、ギュッと腕に力を入れた。
ドゥルルンッ……!
大空の足が地面から離れ、風に乗る。
大きな水溜まりを避け、派手な音を慣らしながら、次第に加速していくバイク。
「……大丈夫か?」
風に乗って聞こえる大空の声。
バイクの騒音や風の音が邪魔して聞こえづらかったけど、大空の声なら全部拾えそうな気がする。
「………うん」
「あっちの空、見てみろよ」
「……」
「凄ぇ、綺麗だぞ」
雲の切れ間から差し込まれる白金の光。天使の階段。
だけど僕は、しがみつくのが精一杯で……それを見る余裕なんて殆ど無かった。
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