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「自己紹介も終わった所で、さっき指示したそれぞれの部署についてね。改めて今日からよろしく。じゃ」  課長が去った後、新入社員達は指示された通りにそれぞれ動き出す。  俺は、佐竹君から目線が外せないままでいた。 (あ…。今度こそ目が合った…)  見すぎたせいか、それとも俺からの視線を感じたのか、バッチリと目と目が合った。しかも彼はそのまま、こっちに真っ直ぐ向かって近づいてくる。  床の上を革靴がコツコツと鳴る音が響く。  周りの人よりも彼のだけ、何故か格別に大きく耳に聞こえる。  少しずつ鼓膜に伝わる床の音もお互いの距離も縮まっていき遠目でも背が高いと思った彼を近く感じると、威圧感の無い背丈に合った高身長で尚カッコ良かった。  コツ。と俺の目の前で足音が止む。手を伸ばせば届くところに彼は居た。 「あのー、こちらが営業部門ですよね?」  佐竹君がデスク前に立っている俺に聞く。 「えっ…あ、はい!そうですよ!ここが営業部門…」  目線を逸して動揺しながら、なんで敬語使ってんだよ俺…。と自分に突っ込んで、返答する。 「小野井さんってどちらにいらっしゃいますか?」 「え…」  急に名字を呼ばれて驚いて、佐竹君を見る。  さっきまでは見えなかった眼鏡の奥に映る瞳が見える。長い睫毛と、黒くとても綺麗な眼をしていた。  トクンと跳ねた鼓動は、何時もより大きく脈を打ち始めた事でトクトクと音を奏でる。静かに相手にバレないようにと、俺は気付いてしまった感情を気付かないふりをして言葉を発する。  もう遠い大学を卒業した頃に自分から止めていた針が、ゆっくり動き出した。

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