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ⅩⅩⅢ
明日に備えて眠りにつこうとした時、携帯が鳴った。
暗闇に煌々と光る携帯を手に取り画面を見つめる。
焦点が合うまで時間が掛かったが、目を細めると見えた。その相手はさっきまで一緒にいた佐竹君だ。
(もう、いいか…)
考える事を止めていた脳は、何もしないという選択肢を選んだ。鳴る鼓動は聞かないふりをしろと自分自身に嘘をつく。
画面を消して携帯を置き、俺は布団に潜りそのまま眠る。
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朝、何時もの時間に行くと佐竹君はいなかった。
デスクにも出社した形跡は無く、俺はルーティーンをこなす為、行動を開始する。佐竹君と出会う前のもう熟れた何時も通りに。
朝礼の時間になり、課長が挨拶を始める。隣には新入社員がずらりと並び、それは初日の光景と同じだった。
「おはようございます。今日から新人さんは研修期間も明け、正式な社員として共に働いて頂きます。とりあえずは名前と所属部署名を私から発表します」
前を向いて話を聞いていても、イマイチ脳へ課長の言葉がインプットされない。つらつらと発表されて、その度に呼ばれた新入社員は一礼をしていく。
「佐竹八生」
ただ一人。ハッキリと聞こえたのは彼。鼓動が大きくドクンとなる。もう、彼に出会って何度目のこの感覚を味わっているんだろう。
彼は何処へ所属するのか。どこに行くのか。関わりの多い部署なら、あわよくばまだ話す機会くらいあるんじゃないか。
課長の口元に目を凝らす。
「営業部配属」
「…え」
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