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1.最初の距離(12)

       翌々日、瀬名は急に学校を休んだことへの謝罪と共に、心底嬉しそうな顔で子供は元気な女の子だったと報告をした。  生徒からのリクエストとは言え、早速の親馬鹿っぷりがよく分かる、産まれた直後なんてどう見ても可愛いとは言い難い写真をひらつかせ、冷やかし混じりながらも祝福ムードの中で、朝のショートホームルームは幕を閉じた。  瀬名の熱狂的なファンの一部は、かなり本気でショックを受けていたようだが、それでも余りに無邪気に喜ぶ瀬名の顔を見ていたら、さすがに絆されてしまったらしい。  後日改めて、クラス全員の名義でお祝いの花を渡そうと提案してきたのも同じ彼女たちだった。  あの調子じゃあ、職員室でもやってんだろうな……。  想像すると、さすがに同情してしまう。  瀬名をなんとも思っていない俺からしても、何度も同じ話を聞くにはどうかと思うような内容だ。  似たような立場の相手と盛り上がるのは勝手にすればいいが、それを完全独身の、しかも瀬名自身を好きな名木先生にするのは本気で勘弁してやってほしい。  きっと名木先生の方は、普通に付き合いよく相槌を打ったり、あまつさえ瀬名の言葉なら何でも笑顔で聞いてやるのだろうが――。  だけどそのたび、心はどんどん傷を増やして行くのだ。それは想像に難くなかった。

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