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2.変わらない距離(2)
「おーい仲矢? どしたの、ぼーっとして」
いつの間にか立ち止まってまで空を眺めていると、不意に背後から肩を叩かれた。
一瞬ぎくりと心臓が跳ねたが、その声が誰のものか分かると、俺はあてつけがましく溜息をついた。
「まったサボろうとか思ってる? 最近お前、化学の時間よくいねぇよな」
振り返ると、そこには加治が立っていた。
「他の時間も大して変わらねぇよ」
「そうかぁ? ……あー、じゃあ、次はちゃんと出んの?」
「………」
どこかひやかすように言う加治に、俺は思わず言葉を失くす。
付き合いが長いだけに、俺の返答など聞くまでもないというような態度が癪に障る。図星なのがまた痛い。
「ははっ」
揶揄混じりの短い笑い声を漏らし、加治は俺の顔を覗き込んだ。
「即答できず」
「する価値もねぇからだよ」
皮肉っぽく返すと、ふざけるみたいに肩を竦められた。
加治は一旦窓外を見遣って、勝手に一つ頷くと、再び俺の顔を見た。
「そうだな。サボるなら付き合うぜ。どこ行く? この時間なら、体育館裏か屋上だよな、基本」
「体育館裏」
「へぇ、今度は即答」
「いちいちうるせぇっつーの」
かぶせるように短く言い捨てると、加治が可笑しげに破顔する。
俺は再度溜息をつき、「もういい」とばかりに歩き出した。生徒の波に逆らい、つかつかと早足に。その後ろに、加治が続く。
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