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3.仮初めの距離(13)*

 周囲を撫で回すようにしながら、指先で突起を押し潰し、時折引っ張っては円を描くように先端を擦る。  そのたび先生は声を抑え、身を固くして、流されまいと必死の様相を見せる。  だがその一方で、身体は腰が抜けたみたいに背の位置をずるずると下げていき、時折垣間見える瞳もすっかり余裕をなくして潤んでいるのだ。  その裏腹な反応が、かえって初々しくも感じられて、 「先生……もしかして、男初めて……?」  ふと思い立って口に出すと、先生は茫洋とした眼差しで俺を見た。  最初は単に、場所や状況のせいかと思っていた。でも、本当はそうじゃなくて、純粋に初めてで怖いと言う気持ちがあるからでは――。 「なん、で」 「これだけ身体硬くしてりゃ誰だって分かるよ」  先生の視線が僅かに泳ぐ。しかし、それ以上は何も言わずにまた閉ざされる。  やはり図星だったのだろう。  俺は先生の身体をコンクリートの上へと横たえ、逃げるように伏せられた瞼に唇を寄せた。  ――っていうか、それってまさか……ずっと瀬名に貞操を誓ってた、とかじゃないよね?  思いながらも、名木先生ならやりかねない気がしてならない。 「ねぇ……もしかしてそれも瀬名のため……?」  堪えきれず、ぽつりと口にする。  先生がそれに答えるとは思えなかったが、答えなくても反応でわかるだろうと思った。  案の定、先生は何も言わなかった。何も言わなかったけど、微かに揺れた肩の動きで当たりだと確信した。

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