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3.仮初めの距離(17)*
「先生、息、吐いて」
充溢した先端をあてがい、ゆっくりと押し開いて行く。
「……ふ…、……――っ」
しかし、そこは未だ硬さを残しており、当然のように異物の進入を拒もうとする。
行為自体が初めてな上、こんな性急な流れでは、身体にも相当の負担がかかっているのだろう。
それを必死に堪えるように、俺の腕へと添えてられていた先生の手に強く力が込められる。
シャツに深い皺が刻まれ、無意識に立てられた爪が布越しながらも皮膚に食い込んだ。
「…先生、少し、力……抜ける……?」
いつのまにか、辺りは真っ暗になっていた。
校舎と言わずグランドにもいくつか明かりは灯っていたが、屋上まで届く光はその中にはないらしい。
目が慣れたせいで、間近にいる先生のことはそれなりに見えるけど、うっかりするとどこにいるのか忘れてしまいそうなほど、周囲はすっかり暗闇に包まれていた。
――そう、ここは学校の屋上で、いま俺の腕の中にいる人は、長い間ずっと見ていることしかできなかった好きな人。
改めて実感すると、怖いくらいに心が震える。
「っ……」
一気に貫いてしまいたいと逸る気持ちを抑え、慎重に腰を進めていく。
それに伴い、逃れたいように先生が身を引けば、その分また距離を詰める。
先生の上にのしかかり、時に浅い挿入に戻しながら、そうしてようやく全てを収めきる。
思わずほっとしたように息が漏れた。
「……ん、……っ……」
先生は自らの手の甲を口元に押し当て、固く目を閉じていた。
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