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4.守りたい距離(6)

「まぁ、その……それは確かにそうなんだがな」  瀬名はなおも諦め悪く、唸り声を漏らした。  俺は思わず笑ってしまった。さすがにここまで来ると、感心を通りこして呆れてしまいそうになる。 「センセー、別に俺、一週間の停学くらいどうってことないですよ。今日びそれくらいで、一切進学できなくなる――なんてことないでしょ? まぁ、俺はまだ進学するかどうかも決めてないですけど」 「それはそうだが……やはり一週間は重過ぎると思うんだよ、先生は。お前は初犯なんだし」 「仕方ないですよ、確かに俺、最近授業サボりまくってたし。それも含めてって言ってたじゃないですか。……って、それに関しては、せっかく先生がフォローしてくれようとしたのに無駄にしてすみません」 「それは構わんが……まったくお前は」  暗に笑い事じゃないと諌められば、今度はふざけるみたいに肩を竦める。 「だったらもう先生も気にしないで下さい」  するとようやく、瀬名は諦めたように小さく肩を落とした。  その様は、いつまでも軽い調子の俺に半ば降参した風でもあり、同時に仕方ない、と全てを受け入れてくれたようにも見えた。 「だが仲矢。今回のことはともかくとしても、お前は普段、喫煙の習慣なんてないだろう」 「え……なんでそう思うんですか?」  意外な言葉に、僅かに目を瞠る。 「そりゃ分かるよ。まぁ何となくだが。匂いって言うか……喫煙者は身近にもいるからな」  〝身近〟……。  危うく声に出しそうになり、咄嗟に喉奥で塞き止めた。

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