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4.守りたい距離(13)
「いや、だからさ。確かにそこで、俺がずっと立ち聞きしてたの、瀬名と名木ちゃんにバレちゃったんだけどー…。でもそれが無かったら、結果としてお前のその、大事な煙草? も、返っては来なかったんだぜ」
「名木先生が辞めることに比べたら、こんな煙草なんてどうでもいい」
「え、いや、どうでもよくはねぇだろ?」
焦ったように弁明する加治に、俺はあてつけがましく息を吐く。
「……つかもうマジ何なんだよ。役に立たねーな」
「や、だから悪かったって……」
加治の口元が空笑いに引き攣る。
とは言え、俺だって本気で責めているわけじゃない。元はと言えば俺が勝手に先走ったのが悪いのだ。
俺がもっと思慮深ければ、きっとこんなことにはならなかった。
加治には寧ろ感謝していた。こいつが友達でいてくれて良かったと本気で思った。
だけどいまの俺には、それを上手く伝えられるだけの余裕がない。
「まぁ、その」
そんな心境を酌んでくれたかのように、加治は場を仕切りなおすように咳払いをひとつした。
「代わりと言っちゃなんだけど――これ」
ぼやけていた焦点を加治に合わせる。加治は再びカバンを開けて、中から一枚の紙切れを取り出した。
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