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5.近くて遠い距離(24)*

「ねぇ、この音聞こえる……?」  俺は両脚を軽く抱え上げ、晒させた狭間を更に割り開くと、谷間に手指を何度も往復させて、ぐちぐちとあられもない音を立てた。  そうしながら、不規則に収縮する窪みに体液を馴染ませ、徐々に入口を緩めさせていく。 「……指、入れるよ」  独り言のように呟き、そこに一本の指を差し入れる。折を見てそれを二本に増やし、絡みつく襞を掻き混ぜるように擦りたてた。 「っ、ぁ、……っ」  先生の身体がびくびくと震える。そんな自分をもてあましたように、先生は必死に頭を振った。 「ん……ぁ、も……っもう、いい……っ…」  先生の手が俺の腕を掴み、再び手繰り寄せるように服の布地を強く握り込む。 「もういいって、なんですか」 「だから、もう……入れるなら、さっさと――…っ、あぁっ……!」  その瞬間、俺は隙を突くように内側のある場所を押し上げた。そこがどういう箇所か知っていて、敢えて透かしていた場所だ。  殺しきれず、先生は高い声を上げた。腰がぎくりと大きく跳ねて、一瞬だけ見開かれた瞳から、請うような眼差しが見えた。 「そんな、俺が突っ込みたいだけみたいに言わないでよ」  繋ぎとめていた理性の糸が危うく途切れそうになる。その分増した情欲が、堰を切ったように俺の背中を押してくる。 「ちが…っ……、そう言う、意味じゃ………」 「知ってる。……ごめんなさい、また意地悪言いました。先生はただ……どうしたらいいか分からなくなるんだよね。恥ずかしすぎて――」  冷静ぶってそう返しながらも、口ほどの余裕は俺にもない。  ゆっくり指を抜き出していくと、引き止めたいみたいに内部(なか)が収縮する。 「ふ…ぁ…っ……」  爪先が抜けると同時、先生の口からうわ言のような吐息が漏れた。  俺はこれ以上ないくらいに張り詰めた自身の先端を、濡れてひくつくそこへと宛がった。 「先生……()れるよ。またベッドの上じゃなくてごめん」  先生の耳元に顔を寄せ、ちゅ、と水音を立ててキスをする。あやすように耳朶を舌先ですくい上げ、そこに軽く歯を立てる。その傍ら、押し付けた屹立を少しずつ埋め込んで行った。 「んっ――…、ぁ……っあぁ……!」    狭い粘膜を押し開き、内壁を引き摺るようにして身を沈める。途中からは結局抑えがきかず、揺さぶりながら一息に限界まで貫いた。  先生の顎先が弧を描いて天を向く。あらわになった白い喉元に、誘われるように唇を寄せる。  膝が胸につくほど先生の身体を折り曲げて、強く腰を密着させる。そのまま円を描くように掻き回せば、視界の端で揺れる先生の爪先が引き攣ったようにピンと伸びた。 「いっ……ぁ……っ、あ……っ…」  押し付けて揺らすだけだった動きに、少しずつ抽挿を足していく。  先生の声は相変わらず抑え気味で、なのに狭い車内にいる所為かやけに耳に近く感じた。  浅く腰を浮かせては、自重半分に身を落とす。その度に先生の粘膜は纏い付き、もっと奥へと誘(いざな)うように収斂を繰り返す。  双眸は固く閉じられていて、伏せられた睫毛はすっかり涙に濡れていた。

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