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5.近くて遠い距離(25)*

 片手で先生のシャツのボタンを一つずつ外し、肌蹴させた胸元に直接手のひらを這わせる。  うっすらと汗を浮かせて上気した肌は吸い付くようで、指先で突起を挟みながらまた腰を律動させた。 「あっ……や、よせ、だめ……だ……っ」 「何がだめなの……全然だめじゃないでしょ。ほら、こんなに俺のこと締め付けてるのに」  否定するよう首を振る先生の顎先に舌を伸ばす。ほら、と言いながら肌をぶつけ、最奥を鋭く穿った。 「――…っ!」  押し殺した悲鳴が車内に響く。先生の腹部に、ぱたぱたと先走りの雫が落ちる。擦れる肌や衣服が、意図せずそれを塗り広げていく。  夢現に陶酔するように、薄く開かれたままの先生の唇が物言うでもなく開閉を繰り返す。  充血した襞は離したくないように俺の熱へと絡み付き、ともすればいっそう奥へと引き込むように淫猥に蠢く。  先生の腰が自ら揺らめき、俺の動きを追い始める。俺の背中へと回された腕にも、せがむように力が込められた。  口で言うのとは裏腹に、身体が開放(さき)を求めているのだ。  思わず口端に笑みが滲む。その様がこの上なく愛しくて。  こんなにもいじらしい先生の姿は、きっと瀬名でも見たことが無い。そして一番近い距離にいながら、これからも一生目にすることはないだろう。  なんて勿体無い話。  本当に馬鹿な男だ。 「あぁ……っ、も……無理…っだ、なか……や……っ」  先生の眉根がせつなげに歪む。濡れて光る唇が、たまらないように戦慄く。 「うん……もっと呼んで、…俺のこと、ちゃんと名前で……」  先生に、「仲矢」と呼ばれるのが好きだった。  そんな程度のことで、俺がどれだけ幸せになれるかなんて、先生は考えたこともないだろうけど。  俺は先生の目尻に口付けると、繋がりが解けるぎりぎりまで腰を引いた。 「先生……好き、……好きです、先生――」 「ぃ…――あぁっ……!」  そして一気に貫いた。「好きです」と、何度も子供の呪(まじな)いのように唱えながら、突き上げるペースを上げた。  瞬間、待ちかねたように先生の屹立から白濁が飛散した。俺が先生の中で昇り詰めたのも、それとほぼ同時だった。

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