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7.epilogue(2)

「なぁに? もしかしていまからデート?」 「いや、別にそういう……」  率直に問われると、さすがに言葉に詰まった。  デートかどうかだけで言うなら、確かにその通りなんだろうと思う。  でも、俺を待っているのは明らかに男で、しかも同年代でもない年上で――。  俺はともかく、先生がどう思われるかを考えると、なかなかすぐに「はい」とも言えない。 「その、何て言うか……」  俺はちらりと外を見遣って、言葉を濁した。 「あ、あの人、前にも仲矢君を迎えに来てた人だよね。……って、分かった! 家庭教師でしょ! そう言えば仲矢くん、受験生だもんね」 「あ、そうそう。そうです。そんな感じ」  ひらめいたとばかりに手を叩いた彼女に、俺は便乗してこくこくと頷いた。  現に先生には、受験勉強の手伝いもしてもらっている。シフトの希望提出がまだだった夏休みの後半は、そのほとんどを勉強(そっち)に回したくらいだ。あながち嘘は言っていない。 「うーん……」  彼女は少しだけ考えるような素振りを見せて、「うん」と独りで頷いた。 「それならまぁ仕方ないね。先に上がっていいよ、私一人でも後十分くらい何とかなるだろうし」 「え、ホントですか。やった……、ありがとうございます!」  俺は一瞬目を瞠った。それでも次にはカウンターを飛び出していて、 「あ、ちょっ……勉強、頑張りなよ!」  背後で彼女が言ったその言葉も、もう耳には届かない。  そもそも、たまにこうして迎えに来てくれるとは言っても、それはそれで稀なことなのだ。  例え今みたいにプライベートで顔を合わせる仲になっても、先生は簡単には俺を甘やかしてはくれない。  だからこそ、逸る気持ちを抑えきれなかった。  俺は手早く脱いだ制服をロッカーに突っ込むかたわら、袖を通したTシャツの裾を手早く引き下ろした。  僅かな手荷物を掴むと間髪入れずにロッカーを閉めて、その数秒後には早くも更衣室を後にする。 「じゃあ、お疲れ様です!」  急ぎ足で店内の出入口へと向かい、その途中、カウンターにいた彼女に小さく頭を下げる。  後は自動ドアが開くのももどかしく、隙間を滑り抜けるようにして外に出た。

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