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第4話

それから数日後。 その日の昼休み、透羽は資料室に向かっていた。資料室がある別棟は、音楽室や視聴覚室、美術室などの特別教室がある棟で、人気もなくシンと静まり返っていた。 視聴覚室を通り過ぎようとした時、教室の扉が不意に開き透羽はビクリと大きく肩を揺らした。 そこにいたのは桜雅だった。 一瞬、目を見開いた桜雅だったが、すぐに無表情な顔を浮かべた。 「朝比奈くん、またね」 不意に後ろから女子生徒の声が聞こえた。無意識に桜雅の後ろを見ると、女子生徒が桜雅の後ろに立ち肩に触れると透羽の横をすり抜けて行った。 (何……してたんだ……?) チクリと透羽の胸が痛んだ。 桜雅を見ても、相変わらずの無表情で何をしていたのか図りかねた。桜雅の据わったような冷たい視線に透羽は耐えられなくなり、その場を去ろうとした。が、桜雅に腕を掴まれ、そのまま視聴覚室に引っ張られた。 荒っぽく腕を離されると、壁に背中を叩きつけられた。 「いたっ!何するんだ!」 キッと桜雅を睨むと、桜雅の怒気を含んだ自分目に透羽はぞっとする。 ガンっと透羽の真横の壁を桜雅は叩くと、 「なんで……!」 桜雅はそこまで言うと透羽から顔を逸らし、再び拳を叩きつけた。 「なんでもねーよ……」 そう呟き扉に手をかけた。 透羽は無意識に桜雅のシャツの裾を掴んでいた。 「言いたい事があるなら……言え」 透羽が言うと、桜雅はキツく目を閉じ、 「なんでもねえって言ってんだろ」 そう言って大きく一つ息を吐いた。 「告白……でもされてたのか?」 透羽は無理に笑おうとしたが、きっと今自分の顔は引きつっていると思った。 「あ?」 「それとも、セックスでもしてたか?」 「何言ってんだ、あんた」 桜雅は先程までの凶暴さはなくなり、呆れたように透羽を見ている。 「そうだな……何言ってんだろうな……」 自分が言った事が恥ずかしくなり、顔を隠すように自分の前髪を掴み俯いた。 一体先程の女子生徒と何をしていたのか、気になって仕方がなかった。男であり教師である自分は安易に桜雅に触れる事はできない。簡単に桜雅に触れる事ができる女子生徒に、酷く嫉妬していた。

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