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第7話 ルークの過去1
「待ってよ、ルーク」
「マナトは歩くのがおそい!!頑張っておいらについてこいっ」
翌週、光の粉を採取するため、山へ登るルークに同行していた。
彼は歩くのがとても速い。子供だと思って油断していたら、思っていたよりもずっと身軽に、まるで跳ねるかのごとく歩を進めている。
道は一直線で続いているから、見失うことはない。必死になって、遥か遠くをずんずんと軽快に登るピンク色の耳を追いかけた。
ルークの話だと、山頂に光の粉を生み出す花が咲いているらしいのだ。
「おーい、マナトぉ、ここだぞぉ」
彼に遅れること十五分で山頂へ着く。
息切れしている俺とは反対にルークは光の粉を集め始めていた。
「これが、光の花…………すごっ」
「な、綺麗だろう?」
山頂の丘全体に、金色の光を放つ丸い花が咲き乱れていた。風が吹くと、さわさわと花粉が飛び、瞬く間に辺一面が光り輝く。小さな星が空気に乗って飛んでいるようだ。
花弁を軽く叩けば光の粉が落ちてくるので、大切に袋へ入れる。十日ほどで花粉は乾燥して光らなくなるため、一度に沢山は持ち帰れない。使う分だけ拝借して、袋の紐を閉じた。
「マナト、元気になってよかったな。キノも大丈夫だろうって言っていたぞ。なあ、マナトはいなくなったりするのか?」
「俺は居なくなったりしないよ。帰る場所も無いんだ。ほら、食べるか?」
キノが山頂で食べるように持たせてくれた軽食を、ルークへ手渡す。
少しの甘みと、穀物の濃い風味がする焼き菓子は彼の大好物だ。サクサクと嬉しそうに音を立ててルークが頬張った。
俺は身体に良さそうなお茶を一口含む。これは痺れるくらい苦い。
「住んでた家は?兄弟や、お母さんはいないのか?」
「家は無い。出ていく予定で片付けてきた。家族もいない。俺が消えても誰も困らないよ」
当たり前だ。次の日に死ぬ予定だったのだから。改めて口にすると虚しくなるような身の上だ。
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