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第9話 ルークの過去3

 キノは素早く俺を裸にし、温かいお風呂へ投げ込んだ。十分あたたまるようにと何度も念押しされ、言われた通りふやけるくらい湯船に浸かる。 ルークは俺が守るように抱えていたからか、濡れずに済んだ。 「キノ、お風呂ありがと」 「落ち着いたか。俺の着るものしかなくて、すまない」  お風呂を出て、ルークの枕元にいるキノへ声を掛けた。 「気にしてない。そんなことよりルークは大丈夫なの?」 膝下まであるキノのシャツを寝間着代わりに着ていた。体格差があるからしようがない。柔らかい生地は身体を包み込んでくれるので、寧ろ気に入っている。 そしてルークは相変わらず死んだように眠ったままだった。 「ルークはいくつだと思う?」 リビングへ移動してから、キノは唐突に質問を投げかけた。 小さなテーブルにはランプが灯っている。ゆらゆらとカーテンに映った影が揺らめく。日はとっぷり暮れていた。 「五、六歳かな」 「実はこれで十五歳だ。幼い時にあまり食事を与えられず、且つ辛いことがありすぎて、身体が成長を止めてしまったんだ。小さな身体には無数の傷が残っている」 「………」 「俺と暮らし始めた当初は、自らの殻に籠っていてね、ここまで明るくなれたのは奇跡だと思っている。だが時々、急に昔の記憶を思い出すようで、ルークは自分を守るために意識を停止させる。心配しなくても、明日の朝になればケロッとして起きてくるよ。彼の防衛本能だ」 子供かと思っていたルークは、俺と三歳しか変わらなかった。『絶対に消えないでくれ』と何度も念押ししていた姿を思い出し、本心の叫びに心が傷む。

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