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第11話 ルークの過去5
「少しでいいから俺に心を許してくれないか。誰も消えたり裏切ったりしないよ。信じて寄り添ってごらん。君には他人を信じる心が欠けている。ずっと一人で頑張ってきただろう。肩の荷を下ろして、俺に頼って欲しい。他人でも家族になれるよ」
「キノ…………は大丈夫……?」
未練がない生き方をしていた俺のことを、キノは気付いていた。思ったことを言葉にすることはせず、頭の中で独り言を呟いていることも、全部知っている。
自分とその他しかない世界で生きてきた俺には、他人を受け入れることができるのだろうか。
「ああ、大丈夫だ。マナトの居場所はここにある」
「……俺、他人を頼ったり、頼られたりするのが苦手で……でも、キノとルークならいいかもって思う……よく分かんないけど……」
少し、ほんの少しだけ頭をキノへ凭れさせてみる。慣れない感触に眉間へ皺が寄るが、そのまま目を瞑った。キノの大きな手が俺の頭を優しく撫でる。キノは強そうなので、シロみたいに居なくなったりはしなさそうだ。
それに、もふもふしている。
俺は思わず頬ずりをした。
「キノはあったかいんだね。知らなかった」
「ああ。マナトもあったかいよ」
ぎゅっと、柔らかい毛に包まれる。今まで体験したことのない安寧な気持ちになった。
「あ、そうだ。面白いことに、ルークの背が最近伸び始めた。もしかしたら、マナトを超えるかもしれない」
「えっ!!本当に??」
「マナトももっと食べた方がいい。さっき風呂へ入れた時、驚くほど軽かった。俺たちみたいに毛もないし、骨と皮だけだった。そのうちルークに追い越されるぞ」
「ルークは食べ過ぎなんだよ……」
「そうとも言うな。はははっ」
翌朝、本当にルークは何事も無かったかのようにケロッとして起きてきた。
俺はキノと目配せした後、顔を見合わせて笑う。昨日より距離が近付いて、なんだかむず痒いような照れくささに、笑みが止まらなかった。
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