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第13話 豪傑と根暗2

キノの心は全く動かないまま、不機嫌な様子で薬事室へ行ってしまった。 室内に気まずい空気が流れる。キノの機嫌はすこぶる悪かったが、固く断られたコニスの機嫌も悪い。 いたたまれなくなった俺は、お茶を淹れることにした。戸棚に隠してあったおやつを見て、ルークが歓喜の声を上げて食べ始める。よかったらどうぞ、とコニスにも勧めてみた。 「ほう…………見かけない顔だな。お前、異世界人か?」 コニスの耳がピクリと動く。俺をじっと見据える鋭い眼差しが些か不快である。 「…………この世界の者ではないです、けど」 それがどうしたと言うのだ。別に悪いことはしていない。俺はコニスを正面から見返した。 「時々迷い込んでくると聞いてはいたが……確かに耳も無く毛が薄い。名は何という?」 「眞人」 「良い名だ。お前もこいつと同じくキノに飼われている身か」 コニスがピンク色の頭をくしゃくしゃと撫で回す。ルークが『ぶにゃぁ……』と変わった鳴き声を上げた。 「違う。飼われている訳ではない」 「では帰る家が他にあるのか?」 「…………そ、それは」 「マナトの家はここだぞっ。変なことを聞くな」 反論したルークを跳ね飛ばし、ずかずかと近付いてきたかと思えば、顎を強引に上向きで固定された。大男相手に為す術もない。何か気に触ったのかもしれないと、今にも飛びそうな拳に目を瞑った。施設にいた頃はいつも突然殴られていたから、荒々しい奴には慣れている、つもりだ。 「綺麗な顔だ。なあ、俺のところへ来ないか?ここは退屈だろうに。瞳の奥は完全に冷え切っていない、冷めた眼差しがいい。お前が気に入った。そうだな……いいことを思い付いた」 俺の腰にスルリと手を絡ませ、更に引き寄せられる。予想もしなかった相手の出方に激しく動揺していた。力を加減されても、俺は動くことすらできない。 「な、やめ……」 「暴れ方も可愛いな。おい、チビ。マナトを借りてくぞ」 「あ、ええええっっっ、ちょっ、やめっ」 いとも簡単に担がれる。俺が暴れようがお構い無しだ。一体どこへ連れていかれるのか、軽いパニックに陥った。 「おい、下ろせっ」 「マナト、マナト、マナトっ、おい、エロじじい!やめろっ、マナトを離せっ」 「悪いな。キノの代わりに貰っていく。返して欲しくば、己が来いと伝えてくれ」 高くなった世界からルークのつむじを見下し、旋回してそのまま外へ出た。

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