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第18話 城にて3
当然熟睡できる訳も無く、夜中に何度も寝返りを打つ。空が明るくなればキノの元へ戻れる。そう考えたら朝が待ち通しくて仕方がなかった。
月の明かりで、水の底にいるような深い青色に室内が染まっていた。ゆらゆらと幻想的にカーテンが揺れる。窓を開けていたかなと、一瞬身を起こした時だった。
「よ、さっきはありがとうな」
「…………誰……え、コニス……?」
真夜中の不審者に言葉を失うも、熊みたいなシルエットにすぐ気付く。彼はとうの前に自宅へ帰ったものだと思っていた。窓から侵入する犯罪紛いの行為は、常識的に兵士長のすることではないだろう。
「何しに来たの……?」
コニスは真っ直ぐに俺を見て、ひたひたと近付いてきた。足音は極力消して歩けるようである。
「アオノ様はお前をキノの元へ帰そうとしている。折角連れてきたのに、帰されては元も子もない」
『だから阻止しに来た』と最もらしい意見を述べ、ドヤ顔で側へ寄ってきた。俺はじりじりとベッド上を後ずさりする。
この時、もっと距離を開ければよかったのだが、時すでに遅し。コニスの重みでベッドが弛む。蛇に睨まれた蛙のごとく、固まった。
「お、俺は明日、帰るんだから、こっち来るなっ……うっ……」
「やはり綺麗な顔をしているな。アオノ様と同類の色気がある」
「触るな……よ……」
腕を掴まれ、なす術もなく組み敷かれた。どう足掻いても、ビクともしない巨体がまじまじと俺の観察を始める。奴の上がった口角に、ぞっと寒気がした。
寝巻きの腰紐を解かれる。半裸に近い身体へ鼻を付けられる行為は、心地の良いものではない。
こ、この変態オヤジ……最初からこれがやりたかったのかよ。気持ち悪い。
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