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第22話 これからの俺と未来2

「こういうやつだ」 突然ひょいとキノの膝に乗せられた。後ろから優しい匂いに抱きすくめられて、くすぐったいやら、胸の動悸で気が気でなくなる。 俺の首筋にほんのり冷たいキノの鼻先が触れた。 「俺はマナトが好きだよ。ルークに持っている家族愛ではない、もっと違う愛だ」 耳元に低い声が響き、背筋がくたんとなる。 「あ、あ、愛って、俺だってキノが好きだ」 「それなら、こっち向いてご覧」 キノの膝上を跨いで見上げた。大きな手で頬を包まれる。柔らかい肉球がくすぐったくて、心地よい。深いグリーンの瞳が俺の心を透かし見ていた。 「こちらの世界では、好きな人には口付けをするが、マナトの世界はどうだろうか」 く、口付けって、キスのことじゃないか。 キノが俺にキスをしたい、それって、それって……言葉にならず金魚のように口をはくはくさせる俺に、キノが笑った。 「やっと気付いたか。顔が真っ赤だぞ」 「え…………はぁ……うん……」 言葉よりも行動か。頭が追いつかない俺へ、キノの唇が一回優しく落とされた。 何度も何度もノックされた扉は、とうとう半開きになる。その隙を逃す訳はなく、次にはキノの侵入を赦してしまっていた。 大きくて温かい舌は、俺の口内を隈無く撫で、空気までも取られそうに吸い付いてくる。長い間、息継ぎを与えられながら、新しい生命を貰うようにキスをしていた。 気持ちが良くて、魂が抜けそうだ。 長い間、本当に長い間、キスと一言では言い表せないくらいの蕩けた時間を過ごした。 「…………アッ、あついっ……くちびるが、じんじんする……」 キノの大きな親指が俺の唇をなぞる。 「マナトは可愛いな。初めて会った時から惹かれていたよ。コニスに攫われた時は怒りで正常な判断ができなかった。もう離したくない。俺の可愛い恋人」 「…………ありが、とう…………」 ありがとう、俺の場所を作ってくれて、と言葉を続けたくても、嗚咽で繋ぐことが無理だった。 死ぬつもりで生きていた。それが今は生きたい、そばにいたいと思える人が目の前にいる。 俺は前の世界では死んだのかもしれない。だから、ここは天国だ。 実は、後に元の世界へ戻ることになるのだが、当時は本気で天国だと思い込んでいた。それくらい幸せで、生きていることに全身で歓びを覚えた。 気持ちの良い風がそよ吹く。 全てにおいて調和のとれた世界と全ての生命へ、感謝の想いを空へ放った。 【おしまい】

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