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第34話その後12
リツのお迎えは、それから3日後の朝にやってきた。当の本人は、迎えが来ないことをいいことに、ホームシックになるどころか、日々野性味が増していた。ルークと朝から晩まで外で遊び、着るものも食べ物も、自然体になりつつあった。
それでも生まれの良さは拭えないらしく、気品は常に漂っている。野生児そのもののルークとは違っていた。
城からやってきたのは、俺が嫌いなコニスと、なんとアオノ様だった。
「母様っ…………」
アオノ様へ抱きつくリツとは正反対に、コニスの視界に入らないよう、俺はキノの後ろへ隠れた。刺すような視線は無視する。コニスは、俺をおもちゃにしようとした。襲われかけた恐怖は今でも忘れられない。
親子は抱擁を交わした後、何やら話し込んでいる。すると、リツはパッと輝くような笑顔を見せた。
「随分と遅いお迎えだな」
「アデルを説得するのに時間がかかってしまって。リツが随分と世話になったことは、感謝します」
リツはアオノ様の衣に顔を埋め、きゅっと抱いた。やはり親子はよく似ている。
「説得……?」
「この近くの別荘へ暫くリツと滞在しようかと思ってます。場合によってはライも」
意味ありげにアオノ様が微笑む。朝日に照らされた姿は女神様のようで、眩暈さえ覚えた。
「リツのためか?」
「それもありますが」
「まさか……」
「察しがいい。そのまさかです」
にこにこと笑うアオノ様に、キノは暫し黙る。
何が何だか事情がよく分からない。俺はキョロキョロと2人を交互に見た。
「……リツとライを命懸けで産んだことは覚えているだろうな」
「もちろん。昨日のことのように覚えてます。キノが取り上げてくれたことも。貴方のお陰で私は生きている」
「次は無いと、あれだけ王にも言って聞かせたのに、効果無しか」
キノは長い溜め息を吐いた。
「私が希望したんです。幸い双子も無事に大きくなった。だから、あと1人、出来れば女の子が欲しいと。アデルは長いこと悩んでましたが、最後には了承してくれました」
「兆候はいつからだ」
「1か月前あたりから。他の者には内緒にしてあります。このまま城にいたら、隠すことは出来なくなる。なんとしてもこの子は守りたい。考えた末、今回も貴方の世話になることにしました」
「少なくとも、俺は了承していない」
険しい表情のキノだが、俺は知っている。キノは相手が誰だろうと、困っている人を突き放すことはしない。それが自らの使命だと信じているから。
しかも、アオノ様もそれを知っていて頼んでいるのだ。この国1番の名医であるキノに。
「ただ、アデルだけは手元に私を置いておきたいと、ただを捏ねて反対した。それを説得するのに時間が掛かったのです。表向きには、リツを迎えに行き、旅先で体調を崩して療養としています。どうか、どうか私とこの子をよろしくお願いします」
深々とアオノ様が頭を下げられた。
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