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第3話

「大丈夫か?」 目が覚めると初めて見る部屋。 噎せ返る様な甘い香りに頭がクラクラした。 「突然倒れたから驚いた」 柔らかな笑みを浮かべた男は名前を村主朧(すぐり おぼろ)だと言った。 S高校の3年生で生徒会長をしているらしい。 人当たりの良い態度や雰囲気や口調や性格はこの優男に似合っていて老若男女関係なしに人気がありそうだ。 水を貰い薬を飲むと、漸く落ち着いたのか呼吸が整った。 「倭京雨音(わきょう あまね)」 名前を聞かれたからそれだけを告げたら、それ以外も聞きたかったらしく残念そうな顔をされた。 初対面の奴に個人情報話す程安くねぇんだよ俺は。 って、別に隠す様な事もないが。 まぁ、つい最近退学になったばかりだけど。 村主は良い奴で、どんなに俺が冷たい態度を取ってもニコニコしていた。 多分コイツαだな。 全てにおいて恵まれてるし優秀だ。 性格迄寛大だし。 こんな穏やかで最強に良い奴初めて見たかも。 ヤバイな、マジで見たい。コイツの堕ちる姿。 薬を飲んだにも関わらず熱くなる身体。 ヤバイな、マジタイプだ。 泣かせて苛めて這いつくばらせたい。 屈服させて服従させられたら、どんなに楽しいだろうか。 考えが顔に出ていたのか 「楽しそうだね」 笑顔を向けられた。 その日から俺は毎日村主の家に行った。 暇だったし、する事なかったし、何より家に居づらかったからだ。 知れば知る程、村主は良い奴だった。 嫌悪の顔が見たいのに寛大なコイツは何をしても大きな心で受け入れてくれる。 憎まれ口を叩いても睨んでも、機嫌悪いの?って笑って頭を撫でてくれて。 何故だろう。初めてされる態度に、全てを受け入れて貰える温かさに、いつの間にか俺は絆されていた。 最初はツンツンしていたが、次第に楽しくなってきた俺は無意識に笑顔を見せる様になっていた。 向けられる声が笑顔が嬉しくて、いつの間にか心が穏やかになった。

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