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第18話 相席はおことわり

「自分たちのテーブルで食べなよ」 と、オレが陽二に言ったら、 「やだ」 と、即答。 「迷惑」 「どこで食べても、ぼくの自由じゃん。ねぇ、野間っち」 と、陽二が野間に同意をもとめた。 「あぁ」 野間はあいづちをうつと、もくもくと夕御飯を食べだした。 「そんな顔してもかわいいだけだし、悠ちゃん」 そんな顔とは、苦虫を噛みつぶしたような今のオレの顔のことなんだろうか? ……やっぱ変態だ。 王子様面だけど、性格が悪い。 他人が困っているのや、嫌がってることが大好物な変質者だから。 そうか、オレの態度はこの変態会長を喜ばすだけだ。 野間の判断は正しい。 オレは、つかんだままだった陽二の手を離した。 「お好きに、会長」 と、オレ。 「ええ、つまんないよ。もっと僕のことなじってよぉ」 そんなことしてないし。 この高級レストランみたいな大食堂には、生徒会や委員会の役職者が、食事ができる専用スペースがある。 周囲の好奇な視線や喧騒からのがれるために、1メートル位の花台に観葉植物や花が飾られたかなり広い空間がそれだ。 ただ、そこにいってもらいたいだけなんだけど。 「うぎゃ!」 陽二に突然、うなじをさわられた。 オレはとっさに立ち上がってしまった。 「あは、相変わらず首が弱いねぇ。キスマークさわっちゃった」 陽二はニコニコとオレを見上げてきた。 でも、オレにはニヤニヤ顔にしか見えない。 どっかでシャッター音がした。 いつのまにか、周りが静まり返ってんだけど。 「そんなもんないよ」 と、オレ。 「知らなかったんだ?  見えないとこにつけるなんて、あざといよねぇ。お花みたいに赤くてきれいだよ。新しいみたいだし、つけられたばっかり?  写真撮ってあげよっか?」 「いらない」 と、オレはイスに座った。 陽二の体に近づいて、 「そんなの身体中にいっぱいあるけど、見せてあげようか?」 耳元でぼそりと、ささやいてやった。 普段は、熱を感じさせない灰色の目が、感情的に見開かれた気がした。 なに? そんなに驚くことないのに。 オレはまだ完食してないけど、もう食欲がうせた。 作ってくれた人には悪いけど、残す。 両手を合わせて、 「ごちそうさまでした」 と、感謝し、立ち上がった。 「二人ともごゆっくり」 よそいき偽物笑顔で言い放ち、その場を離れた。

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